年明け早々の永田町。東京電力の取締役、嶋田隆氏が、次期会長に決まったばかりの社外取締役、数土文夫氏(JFEホールディングス相談役)を連れてまわる姿があった。目的は石破茂自民党幹事長、山口那津男・公明党代表ら、与党の主要政治家への挨拶回りである。

 経済産業省出身で、かつて与謝野馨・元財務相の“懐刀”として秘書官を何度も務めてきた嶋田氏は、東電の現執行部のなかで永田町とのパイプ役を一手に担う。しかし、今回、旧知の政治家たちに「新会長」を紹介して回る胸の内には、もう一つ、強い思いがあったに違いない。

 巻き返しを図る東電“守旧派”には、絶対に主導権を渡さない──。それほどまでに、東電内部では水面下で深い対立が生まれているのだ。

 政府が1月、東電の新たな総合特別事業計画(再建計画)を正式認定したころ、嶋田氏は知人にこうぼやいたという。

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