世界に日本のブランドを売り込む流れを作るオーマイグラス社長 清川忠康さん(32)インディアナ大学大学院で会計学修士を修了、スタンフォード大学ビジネススクールでMBAを取得。スタンフォード大の講師だった元グーグルのCEOのエリック・シュミット氏からシリコンバレーでの起業を勧められたが、「日本」にこだわった(撮影/高井正彦)
世界に日本のブランドを売り込む流れを作る
オーマイグラス社長 清川忠康さん(32)

インディアナ大学大学院で会計学修士を修了、スタンフォード大学ビジネススクールでMBAを取得。スタンフォード大の講師だった元グーグルのCEOのエリック・シュミット氏からシリコンバレーでの起業を勧められたが、「日本」にこだわった(撮影/高井正彦)

 2000年前後に、ライブドアやサイバーエージェントなどの興隆を演出したベンチャーブーム。そうしたベンチャーが、資金調達環境の改善などを背景にこの1、2年で急速に盛り返している。

 いまの起業ブームを見ていると世代的には二つの山があることがわかる。ひとつは家計簿アプリの「マネーフォワード」を創業した辻庸介さん(37)など「遅れてきた76世代」。大企業での経験を生かして起業した世代だ。そしていま、それよりも若い世代の台頭が著しい。それが「81世代」だ。現在31、32歳ぐらいの層を指す。その一人で、メガネのネット通販サイトを運営する「オーマイグラス」の清川忠康さん(32)は世代観をこう代弁する。

「かつてベンチャーが脚光を浴びた時代の代表者である三木谷浩史さんや堀江さんらとは温度感が違う。あのころは成功して、六本木にオフィスを構えて、みたいな肉食系の空気があった。僕らは物心がついた頃からデフレで、大企業でも安泰ではない低成長の時代に育った。倦怠感を払拭したい、刺激が欲しい、という思いで自らイノベーションを起こそうとしている面がある。81世代で飯を食いに行っても、遅くまで飲まずに帰りますしね」

 MBA取得などで2度、米国に留学した清川さんは日本の強みとは何かを考え、「モノづくり」の復活こそ再生の切り札だと思い至った。メガネ通販で起業したのは、価格破壊の波もかぶり衰退する福井県鯖江市の職人の技を世界ブランドにしたい、との思いからだ。鯖江の職人を一軒一軒訪ねてサイトへの出店を求めた。取り扱う約210ブランドの半数超は鯖江産。サイト上で気になるメガネを5本選び、送料・返送料無料で自宅で5日間試せる独自のサービスで購買を伸ばす。

「東京五輪までに世界展開を始めたい。自分が成功モデルとなり、後に続く起業家が増えて、世界に日本ブランドを売り込もうという流れができればいい」

AERA  2014年3月3日号より抜粋