加藤学園暁秀初等学校外国人の先生が日本のカリキュラムに沿った授業を行う。「円周率は3.14、その続きは?」との質問に「1592」「永遠に続くよ」。そんなやりとりも、もちろん英語だ(撮影/今村拓馬)
加藤学園暁秀初等学校
外国人の先生が日本のカリキュラムに沿った授業を行う。「円周率は3.14、その続きは?」との質問に「1592」「永遠に続くよ」。そんなやりとりも、もちろん英語だ(撮影/今村拓馬)
単語のスペルを答えるのは2年生の生徒たち。教員が「私の舌を見て」とTの発音もしっかりチェック(撮影/今村拓馬)
単語のスペルを答えるのは2年生の生徒たち。教員が「私の舌を見て」とTの発音もしっかりチェック(撮影/今村拓馬)
剣道の授業で、発表会に向けて元気な挨拶も練習中(撮影/今村拓馬)
剣道の授業で、発表会に向けて元気な挨拶も練習中(撮影/今村拓馬)

 ここ数年の子ども英語ブーム。背景には国の後押しがある。文部科学省も、英語教育の高度化、早期化を推進しているのだ。

 実践的な会話力を小学生の間に完全に身につけておきたいと思う親もいる。ペラペラになるためには、子どもを英語漬けにしたい。しかし国内のインターナショナルスクールは学費が高いし、卒業後の日本語での大学受験対策に不安がある。そこで日本の小学校とインターナショナルスクールの「いいとこどり」として注目されるのが、「イマージョン教育」を取り入れた私立小学校だ。

 イマージョン教育とは、カナダで1965年にはじまった第2言語習得プログラムの一つ。たとえば英語習得であれば、英語を授業の目的として使うのではなく、別の教科を教える手段として使う。日本では、1992年に初めて、静岡県沼津市にある加藤学園暁秀初等学校が導入した。JR三島駅から車で20分ほどの同校には、親が都心に新幹線通勤することになっても子どもを通わせたいと、転居してくる家庭も少なくない。

 魅力は日本の学校のカリキュラムに沿って学力をキープ、もしくは高めつつ、英語もできるようになる環境だ。同校では1年から3年までは、国語、音楽、道徳以外は英語で学習する。つまり日本の助教諭の免許を持つ外国人の教員が英語で算数などを教えるのだ。

 低学年であれば、一日の授業のうちの約3分の2は英語を使った授業。ただし、入学前は英語に慣れ親しむ程度の児童がほとんどなので、教員は「はさみを出して」などの指示も英語を話しながら、ジェスチャーも同時に行う。見ることと聞くことで理解できるからだ。この日は1年生の授業をのぞいた。冬の段階ですでに、

 Can I read that book?
 Is he absent today?

 と、先生にバンバン英語で話しかけている。授業に必要な会話に問題はなさそうだ。でも休み時間になると、低学年の友だち同士では、ほぼ日本語に。海外の日本の子どもが感じるような言葉が通じないストレスがないのは、こうした息抜きの影響も大きいかもしれない。

AERA  2014年3月3日号より抜粋