からくりもの×西鉄バスバスの乗り換え案内アプリ「バスをさがす 福岡」公式アプリの開発依頼を受けたとき、従業員はわずか4人だった。「公式アプリを作るなんて、『宇宙飛行士になる』と同じくらいの夢物語だった」と岡本豊社長(左)。隣は西鉄バスの米田幸司さん(撮影/比田勝大直)
からくりもの×西鉄バス
バスの乗り換え案内アプリ「バスをさがす 福岡」

公式アプリの開発依頼を受けたとき、従業員はわずか4人だった。「公式アプリを作るなんて、『宇宙飛行士になる』と同じくらいの夢物語だった」と岡本豊社長(左)。隣は西鉄バスの米田幸司さん(撮影/比田勝大直)

 大企業と手を組み、力を増すベンチャー企業が増えている。以前は「元請け・下請け」の関係だった両者だが、いまやお互いの専門性を尊重する「パートナー」になっている。

「大変なことになった」

 福岡県で2012年に創業したシステム開発会社「からくりもの」の代表取締役、岡本豊さんは焦った。県内を走る西鉄バスの乗り換え案内アプリ「バスをさがす 福岡」を12年11月にリリース。地方都市限定のアプリながら、約1カ月で5千人がダウンロードした。

 うれしさより、焦りが上回った。実はこのアプリ、バス会社から依頼されて作ったものではない。「網の目のように走るバスのルートが分かりづらい」と岡本さんが悩み、チームメンバーと開発した。開発に使ったデータは一般公開されているもので、アプリのダウンロードに費用はかからない。特段、断りを入れる必要はないが、予想以上の反響に「謝らねば」と西鉄バスを訪問。面会した西鉄バスのシステム課長、米田幸司さんは、会うなりこう言った。

「このアプリ、素晴らしいですね!」

 ほどなくして、創業から1年もたたない「からくりもの」は、西鉄バスから公式アプリの開発を委託された。

 西鉄バスの米田さんは、ベンチャーと共に行ったアプリ開発を「勉強になった」という。学んだのは、徹底した利用者目線。「バスをさがす 福岡」の操作は、出発地点と目的地点を地図上で指定し、「検索」ボタンを押すだけ。たった三つの操作で、利用するバス停の場所と名前、バスの運行情報を教えてくれる。初めて福岡を訪れた観光客でも使えるほど「超シンプル設計」だった。

「社内に同レベルの開発力はあるが、自社で開発するとつい機能を盛り込み過ぎる。ここまで単機能に絞ったサービスは誰も思いつかなかった」(米田さん)

AERA  2014年3月3日号より抜粋