全国で行われているマラソン大会は、ランニングブームの影響もあって参加者が増えているという。しかしその一方で、走行中のケガや病気など、「マラソン症候群」とも言える状態に陥る人も増えているようだ。

1月に開催された関東地方のマラソン大会。救護所へひっきりなしにランナーが来る。 大会スタッフが担架で女性を運び込んだかと思えば、「足の爪が割れて血が出た」と50代の男性が駆け込んでくる。直後、「両足がつって動けません」と、両脇を抱えられた若い男性が入ってきた。

 初めて2万人を超えるランナーが出場した今大会。大会本部は医師と看護師を例年より1人ずつ増やし、8人体制で臨んだ。参加者へは事前に日本陸上競技連盟医事委員会が作成した「スタート前チェックリスト」を送った。しかし、足の痙攣や低体温症のランナーが続出。救護所を担当した整形外科医は、

「主な原因はトレーニング不足と水分や栄養補給の失敗です。練習もせず、知識もないまま突然、フルマラソンを走る人たちが増えています」

 ランニングブームとともにフルマラソンの参加者も年々増え、2011年度は約25万人が国内各地の大会を完走した。だが、なかには準備運動をほとんどせずにスタートしたり、「前夜祭」と称してレース前日、深夜まで飲酒したりするランナーもいる。『みんなのマラソン医学』の著者でスポーツ内科医の賀来正俊氏は、警鐘を鳴らす。

「フルマラソンは2200~2400キロカロリーのエネルギーを短時間で消費し、何万回もの振動を受けるため、心身に多大な負荷がかかり、さまざまな種類の重症疾患が発生する可能性があります。練習もせずに無謀な挑戦をするのは、42.195(死にいくGO)の通り、死にに行くようなものです」

AERA  2014年2月24日号より抜粋