国際大会の経験豊富な平野は、五輪の重圧とも無縁。ソチの夜空に高々と舞った(写真:日本雑誌協会代表取材)
国際大会の経験豊富な平野は、五輪の重圧とも無縁。ソチの夜空に高々と舞った(写真:日本雑誌協会代表取材)

 雪上競技では史上最年少、しかも日本スノーボード界初の五輪メダリスト。歴史に刻まれる快挙だが、平野歩夢(あゆむ)(15)は、興奮することも感極まることもなく、クールに言った。

「2位はちょっと悔しいけど、今まで積み重ねてきたことが五輪で出せた」

 新時代のヒーローだ。これまでのアスリートは、部活や地域のクラブなどに所属し、国内大会を勝ち上がって日本代表として国際大会に派遣されるのが一般的。一方、平野はわずか小学4年生でプロとなり、ダイレクトに世界に進出した。

 平野の可能性に早くから目をつけたのがスノーボード用具の世界的なトップブランド「バートン」だ。「大会での活躍、滑りのカッコよさがブランドイメージとマッチした」(担当者)と、小4でプロ契約を結び、用具のサポートから海外の大会やトレーニングのコーディネートまで全面的に支援。小学生の頃から世界で戦ってきた平野は、昨年1月には世界最高峰の賞金大会「冬季Xゲーム」で五輪2連覇中だったショーン・ホワイト(米国)に次ぐ2位に。年齢制限をクリアして参戦可能となったW杯では、昨年8月の初出場でいきなり史上最年少優勝を果たした。大舞台での経験があったからこそ五輪も普段通りに臨めた。

 1年のうち8カ月近くを海外で過ごす。平野が通う新潟・村上第一中学校の担任、梅沢怜史(さとし)さん(35)によると、昨年9月以降、登校したのは20日ほど。

「遠征から帰ってきたと思ったら数日後にまた海外へ。最近は帰国するたびに大人になっている。世界で戦いながら成長しているんだと感じます」

AERA 2014年2月24日号より抜粋