ドラマ「ドクターX」では「失敗しない」ことで知られるスゴ腕ドクターが描かれていたが、それは所詮ドラマの話……かと思いきや、実際にもドラマを彷彿とさせるような敏腕ドクターが存在する。

 大病院も舌を巻くスゴ腕ドクターが都心にクリニックを構えている。通常は手術に2~3時間、1~2週間の入院を要する鼻の治療が、20~30分の手術で日帰りできる。

 そんな、にわかには信じがたい技術を持つのが、鼻のクリニック東京(東京都中央区)だ。他に類を見ない超短時間手術は、院長の黄川田徹医師が開発した「内視鏡用吸引洗浄装置」によって実現した。

「一般的な鼻の内視鏡手術では、レンズの先端に付着した血液などを頻繁にふき取るため、手術時間が長くなりがちです。内視鏡用吸引洗浄装置は、内視鏡の先端から水を噴射しながら血液の混じった水を吸引しますから、そうした無駄な作業が不要です。出血量や患者さんのストレスが最小限で済み、手術時間や入院期間を大幅に短縮できます」

 渡辺守成さん(日本体操協会専務理事)は、ここで治療を受け、ずっと悩んでいた頭痛から解放された。都内の病院を受診した際に、「極めてまれな症例。とても手に負えない」と黄川田氏を紹介されたという。

「『前頭洞』という顔面の骨の空洞に、乾燥したチーズのような膿の固まりが充満し、脳を圧迫していました。どうやら、25年ほど前の交通事故で頭蓋骨が陥没した部分が炎症を起こしていたようです」(渡辺さん)

 通常なら、大学病院で耳鼻科医・脳外科医の混合チームが開頭手術をする。最低でも1~2週間の入院が必要だと言われるが、鼻のクリニックでは日帰りだった。

「内視鏡用吸引洗浄装置を使いながら、少しずつ膿を掻き出しました」(黄川田氏)

 脳にかかわる大手術だけに、最初はクリニックに任せていいか迷ったが、今では、

「いつも手放せなかった鎮痛剤から解放されました。海外出張で長時間飛行機に乗るときも、今はまったく不安がありません」

 と渡辺さんは笑顔を見せる。

AERA  2014年2月10日号より抜粋