近年、結婚をしないことを選択する人が増えてきている。一方で、家族を持ちたくても様々な理由から持つことができない「家族難民」とも言える人もいる。彼らが抱える事情や思いとはどのようなものなのか。話を聞いた。

■IT系フリーランスの46歳男性東京都で実家の敷地内に一人暮らし

 僕は一人っ子で、過干渉の「毒親」に育てられた。母親は結婚して子孫を残すべきという「昭和的価値観」に縛られ、僕にもそれを押し付けようとしてきた。天皇陛下のような出会いを願って僕にテニスをやらせようとしたり、僕の彼女に無断で会いに行って品定めしていたり。今も本当は実家とは離れて暮らしたいですが、離れようとすると大病のふりをする母親に縛りつけられて。親が「将来息子が世帯を持った時のために」と敷地内に建てた別棟で、一人暮らししています。もちろん経済的には助かっていますが……。僕の場合、自分の親だけでも持て余しているのに、さらに家族や親戚が増えるのは耐えられません。

■コンサルタントの43歳男性静岡県出身。神奈川県で一人暮らし

 年末年始は日本が一気に家族モードになる時期。友人を飲みに誘うのも気が引けて仕事に精を出していたら、年末肩に激痛が走り、新年早々救急病院に駆け込みました。年明けにフェイスブックを開くと、広告欄に並ぶ「婚活サービス」の文字。「家族がいないと正月はさびしい」と痛感する、自分のような独身者を狙っているのでしょうか。
 
 30代後半には婚活パーティーにも出ましたが、相手から値踏みされる感じがいやで足が遠のいてしまいました。「自立している女性がいい」など相手へのこだわりも出て、結婚は難しいと感じています。家族難民と聞くと、もやもやしていた気持ちにカツを入れられたようでドキッとします。

AERA 2014年1月27日号より抜粋