“炎上”は確信犯だったのだろうか。
芦田愛菜ちゃんが主演し、数々の話題作を手がけてきた野島伸司さんが脚本監修を務めるということで、放送前から注目を集めていたドラマ「明日、ママがいない」(日本テレビ系)。1月15日の初回放送直後から物議をかもしたが、第1話の平均視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は14.0%と高く、同じ時間帯のドラマ「僕のいた時間」(フジテレビ系)を上回ったのだ。第2話も13.5%と高視聴率を維持している。
第1話のあらすじはこうだ。やはり人気子役の鈴木梨央ちゃん演じる真希は、母親が傷害事件で逮捕され、養護施設(グループホーム)の「コガモの家」に入所する。運営するのは、冷酷な雰囲気を漂わせる「魔王」(三上博史さん)。子どもたちを「お前たちはペットショップのイヌと同じだ」と罵倒し、食事をしたいならば、里親に気に入られるよう、「時に心を癒やすようにかわいらしく笑い、時に庇護欲をそそるように泣け」と強要する。
子どもたちは、親が育てられない子を匿名で受け入れる「赤ちゃんポスト」に預けられたから「ポスト」、親が貧乏だから「ボンビ」、母親がギャンブル中毒だったので「パチ」など、互いをかなりキツいあだ名で呼び合う。真希はといえば、母親が交際相手の男を鈍器で殴ったことから、「ドンキ」と呼ばれるようになる。
このドラマに抗議の声を上げたのは、「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を運営する慈恵病院(熊本市)だ。「差別や偏見を助長する」「施設の現実を知る人は少ない。フィクションとはいえ誤解されかねない」として、日テレに放送中止や内容の再検討を要求。全国児童養護施設協議会も、子どもたちへの影響について、調査を始めると発表した。
慈恵病院の蓮田健・産婦人科部長は憤る。
「子どもをイヌ呼ばわりすることなど現在の施設では起こりえません。施設の子どもや職員の名誉を傷つけるものです。施設には虐待を受けるなど肉体的にも精神的にも傷ついた子たちが集まっている。毎週、繰り返し放送されることで、学校でドラマに出てくるようなあだ名をつけられ、さらに傷つくような事態にならないか心配です」
こうした抗議をどう考えるのか、日テレ総合広報部に聞くと、
「このドラマは、子どもたちの視点から『愛情とは何か』を描き、子どもたちを愛する方々の想いと、子どもたちがそれぞれの人生をつかみ取っていく姿を描くものです。制作にあたっては、児童養護施設の子どもたちの尊厳を冒さぬよう配慮し、偏見を助長することのないよう留意しています」
と文書でコメント。抗議は「真摯に受け止め、今後とも内容に細心の注意をはらってまいります」と説明するが、慈恵病院には電話で「謝罪も放送中止もしない」と答えたという。
※AERA 2014年2月3日号より抜粋