指先につけたセンサーなどで無呼吸と判断すると、顔をなでて寝返りを促すじゅくすい君(撮影/写真部・関口達朗)
指先につけたセンサーなどで無呼吸と判断すると、顔をなでて寝返りを促すじゅくすい君(撮影/写真部・関口達朗)

 早稲田大学の文理融合ゼミが開発した、見た目がゆるーいロボット。「家族を助けたい」という学生のアイデアが形になった。

 ぐったりと大の字で仰向けになっているクマ。これは早稲田大学人間科学部の可部明克(かべあきよし)教授のゼミが開発したロボット「じゅくすい君」。

 じゅくすい君は、睡眠時無呼吸症候群の症状改善の支援ロボットとして開発中の試作品だ。就寝中に突然、呼吸が止まる症状で、昼間眠くなり仕事にも差し支え、心筋梗塞や糖尿病などを引き起こしやすくするとされる睡眠時無呼吸症候群。

「治療は、マウスピースや呼吸を促す特殊なマスクを装着して、無呼吸にならないようにするのが一般的。しかし、慣れない器具を無意識に外すこともある。3キロもある大型マスク装置は旅行などに持ち運びにくい」

 と話す可部教授らが、患者に負担をかけずに症状を改善させる方法はないかと開発した。きっかけは、身内に患者を持つ学生が「家族を助けたい」と思ったこと。横向きになると症状が軽減するため、抱き枕を利用していたことがヒントとなり、枕を使って姿勢を変えるように促すアイデアが生まれた。

 使用方法は、じゅくすい君を枕にし、ミニじゅくすい君を指につけて眠る。本体に内蔵したマイクが検出したいびき音や、センサーが指先で測った血中酸素濃度の低下から無呼吸を判断。するとじゅくすい君の腕が持ち上がり、患者の額のあたりをもぞもぞとなでる。その刺激で姿勢を変えさせ、気道を確保する。

 東京女子医科大学の協力・アドバイスを受けて開発中で、同大学附属青山病院睡眠総合診療センターの井上裕司・睡眠検査技士は、「機械を使うことに抵抗がある患者でも受け入れやすく、遊び心があり斬新だ」と期待する。ゼミスタッフの大谷昭子(てるこ)さんは、

「まだまだ課題はたくさんあります。患者さんの個人差にも対応しなければいけませんし、刺激の回数や種類はどのくらいが適切か、データをとりながら検証していきます」

AERA 2014年1月27日号より抜粋