スマートフォンやSNSの普及は、ストーカー問題とも無関係ではない。フェイスブック、LINE、ツイッターなどは便利な一方、恋愛では相手を縛り付けることもできる。近年では、ツイッターに端を発した10代によるストーカー事件も起こっている。

 元交際相手がストーカーに転じてからのリスクは大きい。信頼して伝えた自宅住所、電話番号、学校、職場、友人関係の個人情報が犯行を手助けする。交際中に裸の写真の送信を求められたり、肉体関係があれば寝ている間に裸の写真を撮られたりすることもあるという。

 ではどうすればいいのか。子供からスマホを取り上げればいいのか。

「だからといって道具を取り上げればいいという問題ではない」とストーカーやDV(ドメスティック・バイオレンス)に関する著書がある伊田広行さんは説く。伊田さんが仲間と共に進めるのは中高生を中心とした若年層への予防教育だ。まず加害者や被害者を生みださないために07年から全国を回り、生徒や保護者、教諭らに交際マナーについての講演を続ける。講演では具体的な注意点を話す。

「秘密は互いにあってもいい。交際相手が異性の友達と会っていても、それを怒ったり非難したりする権利はない」
「別れを切り出されたら一度は、自分はまだ好きだ、付き合い続けたいと言ってもいい。でも心変わりした相手を責めたり、しつこく復縁を求めたりするのはだめ」
「両思いだからこそ付き合っていることになる。一方に恋愛感情がなくなれば交際は成り立たない。自分が合意しないから別れない、という理屈は成り立たない」

 デートDV防止教育のファシリテーターで加害者更生教育プログラムを行う「アウェア」の吉祥眞佐緒さんは言う。

「防止教育は義務化するべきです。一度被害が起きれば、加害者も被害者も回復するのに時間もエネルギーもかかる。現状の法律では被害者が逃げる時間を与えるだけで抜本策にはならない。加害者は病気や性格ではなく、『価値観』の問題。対策は早ければ早いほど効果があるんです」

AERA 2014年1月20日号より抜粋