北にとって外貨は「体制維持の生命線」そのものだ。自国通貨の朝鮮ウォンは国外で通用せず紙くず同然。国内でさえ米ドルやユーロ、日本円、人民元がはるかに幅を利かせている。

「何をするにも外貨なしではやっていけないのが実情だ」(労働党の外貨調達部門元幹部)

 だからこそ中国やアジア、欧州などに貿易会社や北朝鮮レストランを出し、伐採工など労働者の派遣、麻薬密売にも手を染め外貨稼ぎに必死になる。

 とりわけ重要なのがロイヤルファミリーの裏資金だ。「統治資金」とも呼ばれる。彼らが楽しむ贅沢品や別荘の関連物資、軍幹部の歓心を買うため贈られるベンツなど高級外車の購入に主として使われてきた。

 金正日時代、この裏資金の調達・管理を任されていたのが「労働党38号室」という特別機関である。ところが金正恩氏の代になって間もない12年5月に38号室は解体、新たな機関に移管された。その新機関が「第三経済委員会」で、組織を実質的に取り仕切るのが労働党行政部だった。それにとどまらず、行政部は軍や党所有の他の鉱山や工場も勢力下に収め利権を急膨張させた。そのトップが行政部長の張成澤氏。

 11月末に銃殺された張氏の側近2人も行政部所属だ。

AERA 2013年12月30日-2014年1月6日号より抜粋