強制わいせつの現場となったマンション。人懐こいという印象も聞かされた沖野被告だが、「話すときに目を合わさず、不安定な印象もあった」と話す住民もいた(撮影/編集部・宮下直之)
強制わいせつの現場となったマンション。人懐こいという印象も聞かされた沖野被告だが、「話すときに目を合わさず、不安定な印象もあった」と話す住民もいた(撮影/編集部・宮下直之)

 兵庫県尼崎市で起きた少年の性的虐待事件。その背景にあったのは、奇妙な集団生活だった。

 中学3年の男子生徒(15)を自宅に連れ込み、集団で性的虐待を行ったとして、11日に強制わいせつ罪で起訴された無職、沖野被告は、3DKのマンションの一室で自分の子ども4人と暮らしていた。県内の少年少女ら少なくとも4人が常に出入りし、彼らは、沖野被告のことを「ママさん」と呼んでいたという。

 3階建てマンションの1階にある部屋のベランダにはごみが放置され、窓の網戸も破れたまま。窓際には少年少女らが使っていたのだろうか、簡素な二段ベッドが置かれていた。

 近所の住人によれば、沖野被告が4人の子どもを連れて、このマンションに引っ越してきたのは1年ほど前。しばらくは静かだったが、今年2月ぐらいから少年少女らの出入りが激しくなっていった。近くに住む男性は、金髪にスエットの上下、サンダル姿の少年少女たちがミニバイクをふかし、大きな音を鳴らしながら近所を走り回るのをよく見かけたと話す。

「マンションの入り口付近には、いつも少年少女たちがたむろしていて、夜中でも騒がしかった。敷地内にある貯水タンクの上に登ったり、ベランダから出入りしたり。マンションの共通玄関を覆う屋根の落書きも子どもらが書いたもの。警察も頻繁に来ていたみたいですわ」

 事件は今年10月、そんな集団生活を背景に起きた。兵庫県警少年捜査課の調べによれば、沖野被告は、交際相手がいると知りながら長女(14)に交際を迫った中学3年の男子生徒に腹を立て、「こらしめたろか」と、犯行を計画したとされる。

 土木作業員の少女が沖野被告の指示で、男子生徒を電話で呼び出し、路上で待っていた4人の少年少女らが男子生徒を部屋に連れ込んだ。その後、室内にいた少年が包丁を突きつけ、沖野被告とともに「なめとんのか!」「奴隷になって家に住み込むか」と脅し、男子生徒を裸にした上で、ベルトでたたいたり、ろうそくを垂らすなどしたという。

 少年捜査課の幹部は、「通常なら、交際を申し込んだくらいで制裁をしようなどということにはならない。ある種の集団心理が働いたのではないか」と話す。

AERA 2013年12月23日号より抜粋