無料通話アプリ「LINE」。その便利さから広く普及し始めているが、一方で中高生らの間ではこれがいじめや嫌がらせに使われることもあるようだ。背景にはネット掲示板などとは違う、LINEならではの事情もある。

 誰でも閲覧できるネット掲示板と違い、LINE上の会話は電話や電子メールのように電気通信事業法によって「通信の秘密」が守られている。そのため、運営会社や民間の監視団体がパトロールすることができない。学校や教育委員会の中には校内に携帯電話の持ち込みを禁止したり、LINEを禁止したりする動きもあるが、根本的な解決にはならないと安川さんは言う。

 例えば、グループからメンバーを強制退会させる「外し」は、本人に知られずにできたためトラブルが多発。ユーザーの意見、要望を受けた運営会社が昨年11月、「○○が××を退会させました」と表示させる機能を追加すると、元のグループはそのまま残し、特定のメンバーを外して新しいグループを作るという方法が広がった。使う側が変わらなければ、新しいいじめがどんどん生まれてくるのだ。

「子どもたちは止め方がわからないのです。指先だけで操作できるスマホなら授業中でも先生に気づかれないし、布団の中まで持ち込める。一つ一つの文章が短く、どんどん会話が進むので、勉強だけでなく食事にもテレビにも集中できず、ストレスを抱えています」(安川さん)

 運営会社のLINEは、今年3月からホームページで「安心安全ガイド」を公開したほか、18歳未満のID検索停止や「友だち募集」を目的とした非公式サイトの閉鎖依頼を進めるなど対策を急いでいる。昨秋から始めた講演活動は年内で130回に達し、12月1日には啓発に特化した専門部署を新設する。

AERA 2013年12月9日号より抜粋