日本で3人に1人が使う無料通話アプリ「LINE」によって、“会話”は格段に速く簡単になった。無料で通話やメールができ、スタンプや絵文字を送ったり、グループを設定すれば一度に最大100人にメールを送信したりできる。一方で、メッセージを読んでも返信しないことが「KS(既読スルー)」と呼ばれるなど、独特のタブーも生んでいる。特に、些細なやり取りが教室の空気を一変させる中高生の間では、即レスしないと外されるなど暗黙のルールができ、LINEがらみのいじめやトラブルが急増している。

 クラスの友だちにLINEの画面を見せられて、中学2年のA君は急に怖くなった。「デブ」「死ね」「キモイ」…自分への悪口が並んでいる。友だちが“証拠”画像として残していたのは、先輩たちも入っているグループ内の会話だった。自分も入っているはずなのに、知らない間に外されていた。

 担任教師が悪口を書いた生徒を注意し、事態はおさまった。でもまた始まると感じている。

「学校で僕の話がどれだけ広がっているのかわからない。気になって仕方がない」

 高校2年生のBさんは、一晩に100件以上入ってくるLINEのメッセージを常にチェックしている。以前から学校を休みがちだったが、最近は朝起きられず遅刻してしまい、勉強する気もなくなってしまった。それでもLINEが手放せないのは、苦い体験をしたからだ。

 LINEを見ないで学校に行った日の昼休み、いつも一緒に弁当を食べている友だちに避けられた。「今度はあいつが外された」という視線が、クラスじゅうから向けられた。きっかけは前日夜のLINE。

「何ですぐ学校休むの」

 そのメッセージに気づかず、無視したと思われた。ちゃんと返信していれば、こんなことにならずに済んだのに──。仲直りできたが、夜中もLINEが気になって眠れなくなった。

AERA 2013年12月9日号より抜粋