近年イクメンという言葉が出回っているが、実際に育児休暇を取得している男性はごくわずか。一方で厚生労働省の調査では、「育休を取りたい」「育児のため短時間勤務制度を利用したい」と考える男性は3割を超える。それでも現状が変わらないのは、上司が部下の育児参加を妨げる「パタニティー・ハラスメント(パタハラ)」だけでなく、刻一刻と状況が変化する職場から離れるのが怖いというのも本音だろう。

 グループウエアで国内最大シェアを誇るサイボウズの社長、青野慶久さん(42)も、その一人だった。自称「仕事バカ」。職場で死ねたら本望だと思っているが、長男が生まれた時に2週間の育休を取り、次男の時は半年間、週休3日にした。転機は本社がある東京都文京区の区長で、日本初の育休首長として話題になった成澤廣修さんと子どもの誕生日が一緒だったことから、ツイッターで育休取得を勧められたことだった。

 睡眠時間以外はすべて働いていた生活が一転、仕事に充てられる時間は会社にいる朝8時半から夜8時までと帰宅後の1時間に激減。IBMやマイクロソフトと戦う自分がこんなことでいいのかとストレスを抱えたという。

「でも、実際やると自分がこんなに子育てを楽しんでいることに驚きます。以前大企業にいたので若いパパの不安はわかりますが、『育休は必ず取っとけ!』と言いたい。時代は変わり、優秀な経営者は育休を取る男性を求めています。間違いなく人事部長の席が待っています」

AERA 2013年11月25日号より抜粋