イメージ写真(場所/東京理科大学、撮影/今村拓馬)
イメージ写真(場所/東京理科大学、撮影/今村拓馬)

 依然、厳しいとされる就職戦線の中、売り手市場が続いている理系学生。理系の場合、大学院に進むケースも少なくないが、学部卒と院卒では就職活動における闘い方がやや異なる。

 現在、旧帝大や、首都圏の有名私立大クラスなど偏差値の高い大学の学生ほど、院進学が圧倒的な多数派。特に大企業では、院卒以上でないと研究職に就けないケースも多く、研究職を視野に入れて進学するなら、6年間学ぶことを覚悟したほうがいいかもしれない。ただ、日本の就職活動はより深い専門性を身に着ければよいわけでもないのが難しい。理系専門の就職情報誌「理系ナビ」の渡辺道也編集長は言う。

「博士課程に進学すると、実力がない限り就職の選択肢はかえって狭まる可能性があります。志望企業が専門性をどの程度求めているのか、見極めも大事です」

 大学院は進学先の選択も重要だ。最終学歴のブランド力を高めようと、受験時の偏差値がより高い大学の院に進学したがる学生は多い。しかし、それが就職に有利に働くとは限らない。基本的に理系は大学4年生から研究室に所属するので、学部と同じ大学の院に進学すれば学部時代からの研究をそのまま続けられる。しかし、他大に進学した場合、系統は同じでも全く同じ研究をしているケースはほとんどない。そのため、同級生が研究を進めているなか、最初の半年は講義を受けるなど新しい勉強をせねばならず、研究を始めるのは早くても夏休み。企業のサマーインターンが始まる時期だ。そうすると、就職活動が始まる12月までに一定の成果を残すことは難しく、企業へのアピールが弱くなってしまう可能性があるのだ。

「そもそも日本企業の人事は、学部時代の大学名でポテンシャルをはかる傾向にある。院だけブランド力がある大学に行っても、研究成果があがらなければかえってマイナスになることもありえるのです」(岡村教授)

AERA 2013年11月25日号より抜粋