ホテルや百貨店の食品偽装が相次いで発覚し、問題視されている。その一方で指摘されているのが提供する側の「認識の甘さ」。その背景には、「ゆるい法規制」があるようだ。

 店頭で包装・容器に入った状態で売られている生鮮、加工食品は、「JAS法」によって名称や産地の表記が、厳密な定義のもと義務付けられている。しかし、外食のメニュー表示を規制するのは「景品表示法」。こちらは「実際のものより著しく優良であると示すもの」を取り締まる。消費者庁の担当者は「例えば青いものを『緑』と表記しても問題はないが、マイナスのものをプラスに表記したら優良誤認になる」と話す。いずれにせよ厳密な定義はない。神戸大学大学院の中川丈久教授(消費者行政)はこう語る。

「『牛肉使用』と書いてある場合、牛肉を少しでも使っていれば嘘ではない。使用率が何%以下なら景表法に抵触する、という基準はなく、いずれもケースバイケースの判断になります」

 バナメイエビを車エビと表記するなど、実際の食材より高価な食材をメニューに表記すれば、アウトだ。また、牛脂注入加工肉を「ステーキ」と表示したケースも、消費者庁が「景品表示法上、問題」という見解を示しているからアウトになる。

 中川教授によると、例えばストレートジュースをフレッシュジュースと表示した場合、消費者が損害賠償を請求することは難しいという。なぜなら、

「ジュースを飲みたかったのではなく『フレッシュ』だから飲みたかったのだと立証するのは難しい。健康被害もなく飲食したという事実もあるためです」

 今年に入って東京ディズニーリゾート内のホテルやプリンスホテルが虚偽表示を公表したが、ともに景表法違反に問われなかった。明らかなアウトもあるが、違法と言い切れない「グレーゾーン」の表示もあったためとみられる。

AERA  2013年11月18日号より抜粋