利率の計算方法は基準金利×0.66。以前の基準金利―0.8より、現在の金利状況では利率が上がりやすくなったと言える(撮影/写真部・大嶋千尋)
利率の計算方法は基準金利×0.66。以前の基準金利―0.8より、現在の金利状況では利率が上がりやすくなったと言える(撮影/写真部・大嶋千尋)

 景気がよくなってきたら金利が上がる。だから、住宅ローンなどの借金は早めに金利を固定し、増やす分については、金利が市場動向によって変動するものがよい──。景気回復を見越して、そう考える人も少なくないのではないだろうか。

 増やす先として、個人向け国債の変動10年が人気だ。個人向けに販売する国債は2種類ある。一つは、買った際の利率が変わらないタイプだ。3年満期の「固定3年」と5年満期の「固定5年」がある。もう一つは、半年ごとに利率が見直されるタイプで、10年満期の「変動10年」。金利の状況に利率も連動する仕組みだ。どれも1万円から買える手軽さが売りで、発行は固定3年が毎月。その他は年4回(12月から毎月発行に変更)。利払いは年2回だ。

 インフレ期待からか、変動10年の10月の発行額は前回より2倍以上増えて6660億円となった。変動10年の魅力は、0.51%(10月発行分)という利率の高さ。インフレと連動して上がっていく可能性が高いのもメリットだ。

 しかし、利率の高さにひかれて長年、持ったままにしていては駄目。10 年満期という言葉につられてしまう人が多いようだが、1年を過ぎれば自由に換金できるし、元本は保証される。ただ、途中で換金したら、ペナルティーとして直近2回分の利子のほとんどを失ってしまう。

「利率が高いときに換金しようと思った場合、高い金利分を手放すことになるでしょう。損をすると思うと換金しにくくなりますから、ここは、『銀行の預金金利と比べたら儲けは多いから、よしとしよう』と割り切って換金を」(金融アナリストの永野良佑さん)

 景気が良くなっても、ずっと利率が上がっていくかといえば、そうとは限らない。

「景気が良くなってきたら、次第に変動型の基準となる長期金利よりも短期金利の方が早く、大きく上昇することがあります。バブルの頃がそうでした。長期金利が5%ぐらいになってきたら、株や投信へと資産を動かした方がいいかもしれません」(永野さん)

AERA 2013年11月18日号より抜粋