機密情報の取り扱いに「配偶者の出身国」が影響?

 国会で審議中の「特定秘密保護法案」には人種差別と言われかねない条文がある。公務員の配偶者の「過去の国籍」を調べ、秘密取り扱いの適性を評価するのだ。

「日本にはスパイ防止法がなく、野放し状態」と言う人が少なくない。だが実は秘密漏洩を罰する法律として国家公務員法(懲役1年以下)、地方公務員法(同)、自衛隊法(同5年以下)、在日米軍の秘密に関する「刑事特別法」(同10年以下)、米国製装備などに関する「日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法」(同)があり、民間人、外国人も教唆(そそのかし)や共謀で処罰できる。「汚職防止法」がなくても、刑法に収賄罪、贈賄罪があるから汚職が野放しでないのと同様だ。

 特定秘密保護法案が従来の日本の法令と大きく異なるのは、刑を「10年以下の懲役」とするほか、安全保障に関する重要な秘密を扱う公務員、企業を限定し、「適性評価」をして漏洩の心配がない人だけに扱わせる点だ。これまでも米国で製造、開発された装備の秘密を扱う自衛官や防衛産業の従業員は身上調査を受け秘密取り扱い資格を与えられたが、この法案でその対象者は外務省、防衛省、全国の警察だけでなく、国土交通省や経済産業省、文部科学省などで安全保障に関わりがある情報を扱う職員や企業にも広がりそうだ。

 法案第12条の「適性評価」では評価対象者の配偶者(事実婚を含む)、父母、子、兄弟姉妹、配偶者の父母、子、同居人の氏名、生年月日、国籍(過去に有していた国籍を含む)、住所等をはじめ、犯罪・懲戒歴、情報取り扱いの非違の経歴、薬物乱用、精神疾患、飲酒の節度、経済的状況について、本人、知人、公務所、公私の団体に質問、照会するとしている。

 法案提出前に各党に示した要綱では配偶者などについて単に「国籍」を調査、としていたが、法案では「過去の国籍を含む」に変えた。例えば公務員の妻が婚姻により日本国籍になっていても、元は中国人とかイラン人、ロシア人などだったり、その親が外国にいたりすれば、要注意人物とみなされ、夫は秘密にふれる機会が多い高い地位に就けない可能性がある。

 憲法14条は人種による差別を禁じているほか、日本も加入している「人種差別撤廃条約」は、現在の国籍による区別、制限は認めつつ、人種、世系(血統)、民族的、種族的出身による区別、排除、制限などを人種差別と定義し、締約国は「人種差別を生じさせ、又は永続化させる効果を有するいかなる法令も改正し、廃止し、無効にする」と定めている。配偶者の出自だけで適性評価が決まらなくても、ある程度の「効果」が生じそうで、特定秘密保護法が成立すれば国際的人権団体から条約違反の指摘を受ける可能性がある。

AERA 2013年11月18日号より抜粋

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