上り坂をかけあがりながら迎えた1964年の東京五輪。一方で2020年の東京五輪は、下り坂をゆっくりと進む先にある。日本はこれからの7年で、浮上のきっかけをつかめるのか。各界の識者に、打つべき一手を聞いた。

 日本が抱える大きな問題のひとつが、財政問題だろう。高齢化にともない、社会保障費は毎年1兆円のペースで増えていくのだ。慶應義塾大学ビジネススクール准教授の小幡績氏も、社会保障制度にメスを入れるべきだと考えている。消費税率を10%まで上げ、成長戦略によって税収が過去最高水準を回復し、しかも世界経済になんの変調がなかったとしても、20年時点で17兆円分歳出を減らさなければ、政策にかかる経費を税収でまかなえるプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化は達成できないと見る。

「年金の支給額は3割カット。支給開始年齢も、20年までには70歳まで引き上げなければ」

 そうなると、20年には、当然のように70歳くらいまで働く社会になる。ニッセイ基礎研究所専務理事の櫨浩一氏も、高齢者が働くしかない、との主張だ。

「若者の仕事を奪わないように、高齢者が働ける社会を作る。それが唯一絶対のカギです」

 リクルートキャリア特別研究員の海老原嗣生氏は、高齢者産業の活性化と同時に、「一生ヒラ社員」という働き方を浸透させるべきだと考えている。

 出世はできないが、残業の必要はなく、ある程度の給料はもらえる、という雇用形態。女性の社会進出が進むなかで、ワーク・ライフ・バランスの問題を解消する意味合いもある。同時に、高齢者の雇用問題に一石を投じる可能性があるのだと言う。

「出世をしなければ、管理職になってしまって実務能力が衰えたりはしないから、高齢者になっても働ける。欧米型の『優しい格差社会』にしようということです。そのためにも労働の自由度を増すエグゼンプションを検討すべきです」

AERA 2013年11月11日号より抜粋