「バブル期の銀行は、世界規模でビジネスの主導権を取れるように思えた。今は内部で減点方式の不毛な競争を続けている」(元メガバンク・男性) (撮影/写真部・松永卓也)
「バブル期の銀行は、世界規模でビジネスの主導権を取れるように思えた。今は内部で減点方式の不毛な競争を続けている」(元メガバンク・男性) (撮影/写真部・松永卓也)

 今や就職人気ナンバーワンと言っても過言ではない銀行。「半沢直樹」の影響で、今年はどうなるのか。

 12月に解禁される今年度の就活では、銀行人気はいかに。ハナマルキャリア総合研究所代表の上田晶美さんによると、10年ほど前、突然「検察事務官になりたい」という女子学生が激増したことがあったという。

「その年(2001年)に放映された月9ドラマ『HERO』で松たか子が演じた職種だった。社会に出たことがない学生にとって、ドラマの影響は大きいようです」

 では、「半沢直樹」人気で銀行人気にますます拍車がかかるのか。信州大学経済学部の真壁昭夫教授はこう解説する。

「ドラマで新たに銀行に興味を持った学生も多いかもしれませんが、なかには『銀行志望だったのですが、あれほど大変ならやめたほうがいいでしょうか』と質問してくる学生もいますよ」

 実際、首都圏の有名大学3年の女子学生(21)も銀行を視野に入れて就活を始めるが、「半沢直樹」を見て不安になっている。

「正義が通らず、従順でないと冷遇されるのかな…と心配なんです」

 銀行に内定した先輩に「大変なところで働くんですね」と言うと、「わかっていたけれど、割り切って働くつもり」という答えが返ってきて、なおさら覚悟のいる仕事だと感じたという。

 一方、銀行はどんな人材を求めているのか。三菱東京UFJ銀行の広報担当者はこう話す。

「個性にあふれた人を求めています。銀行の業務は多岐にわたっているので、好奇心を持って何事にも取り組める人に入社してもらいたいと思います」

 一部の学生には悲愴感が漂っているようだが、今回の取材では多くの銀行員が「半沢直樹」の内容について、「共感する部分もあるが、あんなに悪い上司は普通いません」。諦めず、ビビらず挑戦してほしい。

AERA 2013年11月4日号より抜粋