10月23日、ロンドンのセント・ジェームズ宮殿のチャペルで行われたジョージ王子の洗礼式では、夫妻の学友らが名付け親に選ばれた(写真/gettyimages)
10月23日、ロンドンのセント・ジェームズ宮殿のチャペルで行われたジョージ王子の洗礼式では、夫妻の学友らが名付け親に選ばれた(写真/gettyimages)

 英王室のウィリアム王子(31)とキャサリン妃(31)の長男、ジョージ王子が10月23日、キリスト教徒になるための洗礼を受けた。生後3カ月を迎えたばかりの王子は泣きもぐずりもせず、終始穏やかな笑顔を浮かべる「おりこうさん」ぶりを発揮した。しかし洗礼式は、両親の意思が前面に打ち出される異例の儀式となった。

 執り行われた場所だが、バッキンガム宮殿のミュージックルームとの大方の予想を覆し、セント・ジェームズ宮殿のチャペルが選ばれた。チャールズ皇太子(64)もウィリアム王子もバッキンガム宮殿だったのに、なぜ王位継承第3位のジョージ王子はここなのか。セント・ジェームズは歴史ある宮殿ではあるものの、現在では限定された公式行事の他はほとんど使用されない。地味な上に小ぶりで、将来の国王の初公務にはふさわしくない。

 理由は、ウィリアム王子の母への思いがあった。1997年8月末日にパリで交通事故死したダイアナ元妃(享年36)の棺は、9月6日にウエストミンスター寺院で葬儀が行われるまでここに安置された。当時15歳だった王子は弟のヘンリー王子(29)と別れを告げに訪れている。

 ウィリアム王子は、婚約の際にはキャサリン妃に母の形見の指輪を贈ったり、妃の出産場所に母が自分を産んだ病院を選んだりと、ことあるごとに「母に見守ってほしい」と願ってきた。このたびの宮殿の選択もまた母への追悼の意味からだった。

AERA 2013年11月11日号より抜粋