由利高原鉄道(第三セクター)2年前に公募で選ばれた春田啓郎社長と、秋田おばこ姿の車内アテンダント、工藤景子さん。矢島駅で(撮影/今祥雄)
由利高原鉄道(第三セクター)
2年前に公募で選ばれた春田啓郎社長と、秋田おばこ姿の車内アテンダント、工藤景子さん。矢島駅で(撮影/今祥雄)
つり革に名前や写真を載せられる「つり革オーナー」などファンを増やす試みも積極的(撮影/今祥雄)
つり革に名前や写真を載せられる「つり革オーナー」などファンを増やす試みも積極的(撮影/今祥雄)
車両も新造した(撮影/今祥雄)
車両も新造した(撮影/今祥雄)

 過疎化などの影響で赤字を出しているところも多いという地方鉄道。一方で生き残りをかけて、珍しい取り組みを行っている鉄道もある。

 秋田県のJR羽越線羽後本荘駅から内陸の矢島駅(ともに由利本荘市)までを結ぶ第三セクター、由利高原鉄道。三陸鉄道に比べて観光の目玉は少ないが、春田啓郎社長(61)は「沿線に鉄橋が二つあり、田園地帯をのんびり走る『癒やしの風景』を提供できる路線です」と胸を張る。

 旅行会社を経て2年前の7月、社長公募に応じて転職した。縁もゆかりもなく「乗ったこともなかった」という春田社長が掲げたモットーは「1勝9敗でいい」。月に1回は社員を集めて企画会議を行い、どんなアイデアでもまず実行してみる。

「たくさん失敗したとしても、一つヒットが出て回収できればいい」

 2月には「女子会“ほろ酔い”列車」、4月には「雪室解禁列車」、11月には矢島駅近くにある市の施設でのエクササイズと連携した「エクササイズ列車」など、毎月のように地元の観光資源と密着した列車が走る。沿線全駅に地域住民が作ったかかしを並べて人気投票を行う「かかし列車」は特に人気を呼び、3回目となった今年も80体近いかかしが沿線に並んだ。この企画を発案したのは同社に4人いる女性アテンダントの1人。

「アテンダントさんが隣町までかかしの作り方を聞きに行ったりしてイベントを盛り上げてくれました。車内の飾りつけやチラシ作製などアテンダントさんに本当にお世話になっています。今年は団体客が昨年の5割増しくらいになった実感がありますね」(春田社長)

AERA  2013年11月4日号より抜粋