企業と大学とが連携して新商品を開発する「産学連携」。コラボ効果でヒット商品が生まれることも多いため、こうした動きは増えているようだ。
今夏には、大学生個人が企業とコラボした。バンダイが発売したボードゲーム「JINTOL(ジントル)」の原案を、大学生が考えたという。開発をリードした高橋晋平さんは、全世界で累計335万個を販売したヒット玩具「∞(むげん)プチプチ」のプロデューサー。そんなヒットメーカーをしても「開発は至難の業」とされるのがボードゲームだ。ルールはシンプルながら、奥深さが求められるからだという。
ところが、慶応大学法学部の杉本和希さんは、「原案を30秒でつくった」。寮で隣に住む理工学部の中里龍さんとさらに構想を練り、アドバイスを請うため、つてを通じて高橋さんにその案を見せた。完成度の高さに驚いた高橋さんはすぐさまコラボを思いついた。
実は、高橋さんはすでに社外コラボの効果をよく知っていたのだ。以前手がけ、大ヒットとなった「∞プチプチ」を開発中、「プチプチ」という言葉が梱包材メーカーの登録商標だと知り、コラボを持ちかけたことがあった。おもちゃとは無縁の会社だったが、それゆえの盛り上がりが、推進力を生んだ。今回の杉本さんと中里さんの熱意にも同様の可能性を感じた。もちろん「大学生とのコラボ」という触れ込みが、宣伝につながることも分かっていた。でも大切なことは他にあった。
「私たちは同じ枠の中で仕事をしている。でも社外で熱意のある人の力を借りたら、いいものができる」(高橋さん)
「JINTOL」は7月に発売、大学生や大人にも反応がよく、高橋さんはヒットの手ごたえを感じている。
※AERA 2013年10月28日号より抜粋