パソコンやスマホ、タブレット端末を使う機会が増えた現代人。首こりは時代がもたらした症状らしい(撮影/写真部・慎芝賢)
パソコンやスマホ、タブレット端末を使う機会が増えた現代人。首こりは時代がもたらした症状らしい(撮影/写真部・慎芝賢)

 実は今、肩こりならぬ「首こり」に悩む人が増えているという。特に女性に多いというが、その理由は何なのか。

 都内で働く会社員の女性(37)は、2年くらい前から首が重いと感じることが多くなった。

「夜になると、首がどんどん重くなり、痛くなっていくんです」

 通勤中はスマートフォン(スマホ)を見ていることが多い。仕事ではノートパソコンを使い、姿勢は前かがみになりがちだ。長時間の会議でストレスがかかると、首はよりしんどくなる。

「自分でアロマオイルでマッサージするとよくなります。ですが効果は一時的なんです」

 あまりに首が重く、休日でも何もする気が起きないこともある。それでも仕事に行かなければならず、じっくり休む時間はない。

 つらい首筋のこりや首が重く感じるといった症状で悩む人は近年増えている。いわゆる「首こり」だ。日本人は西洋人に比べて頭が大きい傾向がある。その頭を支えるために首に負担がかかる。しかも女性は一般に、男性に比べて首が細く、より首が疲労してしまう。

 長年「首こり」に悩まされる人を診察し『首こりは万病のもと』などの著書がある東京脳神経センター(東京都港区)理事長の松井孝嘉医師は言う。

「年齢は20~40代の働き盛りが多く、女性は男性の2倍程度」

 近年増えてきた要因もある。

「携帯とパソコンです」

 医師らは口を揃える。携帯電話を操作する際、つい下を向くことが多い。パソコンもノート型が増え、視線はモニターやキーボードがある下に向きがちになる。昔ながらの読書やメモ取りなども同じように下を向くが、デジタル機器だとより長い時間、同じ姿勢をとって集中しがち。スマホが普及してから、さらにその傾向が顕著になった。

「首こり」の正体は何なのか。30年以上前から「首こり」という言葉を使い続けてきた松井医師は、次のように説明する。

「頭の重さは約6キロで、男性用のボウリングの球ぐらいの重さ。下向きの姿勢は、まっすぐな状態と比べて首にかかる負担が約3倍。下向きで首の筋肉を酷使すると、首の後ろの筋肉が疲労し、酷使し続けると筋肉が硬くなってしまう。これが首こりです」

 首の構造は複雑だ。首の周辺には肩と首に関係する僧帽筋や、頭部を支える頭板状筋など役割が異なるさまざまな筋肉がある。首こりにも、肩こりを併発するタイプ、頭痛を併発するタイプなどさまざまだ。単純にメカニズムを解説するのは難しい。

AERA 2013年10月21日号