あなたはすごい。そう言われることなどめったにない。日本人はすごい。たまに耳にするその言葉が心に刺さる(撮影/写真部・東川哲也)
あなたはすごい。そう言われることなどめったにない。日本人はすごい。たまに耳にするその言葉が心に刺さる(撮影/写真部・東川哲也)

 お笑い芸人のライブに、雰囲気は近いかもしれない。背筋を伸ばさないといけないような、その種の集会によくある厳かな空気は、まったく感じられない。だが、放たれるメッセージは、まぎれもない「尊皇」だ。

「天皇は神の子孫です。私たちはみんな、神の子孫なんです」
「日本の特徴は、君民一体という点にあるんです」

 9月上旬の平日夜、慶応大学(東京)のホールで開かれた「竹田研究会」。重々しさも、堅苦しさも感じないのは、講師の竹田恒泰さん(37)によるところが大きい。

 この夜のテーマは「君が代」。ステージ上の日の丸に深々と頭を下げて演壇に立つと、竹田さんは君が代が国歌となった経緯を解説し始めた。と思うと、もともとの和歌を、独特の節回しで歌い上げる。会場いっぱいの約250人から起こる大拍手。続けて、米国や英国、中国などの国歌も、マイクを握って次々と熱唱。「いやー、恐ろしい歌詞ですねー」などと笑顔でコメントを加えるたび、どっと笑いが起こった。

 だが、言葉を変えながら竹田さんが繰り出すメッセージは一貫している。君が代については、こう語りかけた。

「国民として歌う場合は、『君』というのは天皇ですよ。政府の見解、僕は間違っていると思っています。象徴天皇制が続くようにと言っていますが、私は生身の天皇だと思っています」

 この竹田研究会がいま、急成長している。竹田さんの講演を聴いて感動した実業家の呼びかけで、2008年に東京で発足。以来、北海道、愛知、京都、大阪、福岡など各地で竹田研究会が続々と設立され、現在全国16カ所で定期的に竹田さんの講演会や勉強会が開かれている。

「日本人ってすごい、という気持ちになるんです」

 慶応大での研究会で時折、iPadを指で叩いてメモを取っていた都内の女性会社員Aさん(33)は、竹田研究会についてそう話す。きっかけは昨年末、「面白い会に行ってきた」と言って、知人が見せてくれたメモだった。

「『あけましておめでとうございます』は何かがめでたいからではなく、ハレの状態をつくるために言う」
「日の出に起きて、日の入りに床につくのが日本の伝統的な生活。大晦日も、日が沈んだときが新年と考えられていた。だから、暗くなったら『おめでとうございます』と言っていい」

 誰からも聞いたことがなかった話に、知的好奇心が刺激された。ふだん自分が何げなくしてきたことの「意味」を教えられた気がした。

 実際に足を運んだ研究会は「期待以上でした」。君主と臣民が争った歴史をもつ国が多い中、日本では2600年近く天皇と国民が戦ったことがないと聞き、日本人の精神性の高さを誇りに感じた。天皇はいつの時代も大変な努力をして国民の幸せを祈っていると言われ、自分が大事にされている感覚に包まれた。

「竹田先生のお話を聞くと、自己肯定感を覚える。同時に、自分の姿勢が正されるような気がします」(Aさん)

AERA 2013年10月7日号