7年後に向けて、五輪特需に建設業界は沸き立つ…と思いきや、建設現場は人手不足にあえいでいる。被災地でも建設工事が始まるため、人手の奪い合いにもなりかねない。

 会計検査院によると、東北の被災3県が11年10月から1年間に発注した土木を中心とする復旧・復興工事のうち、2割超が入札不調となった。「労務単価など積算基準が改善しても、労働者が確保できなければ仕事を断らざるを得ない。鉄筋工や型枠大工が不足していたが、最近はとび・土工にも波及してきた」(専門工事会社幹部)という。

 コンクリート型枠工も足りず、職人不足や円高から、鉄筋コンクリートの鉄筋組み上げは、鋼材を韓国で調達し、組み立ては中国で行い、それを日本に持ってくるということも珍しくなくなった。

 被災地では、宅地などの造成工事が本格的に始まったところだ。今後土地の造成が終われば、住宅のほかに商業施設や公共施設などの建設工事も始まる。

 一方で、五輪関連工事も発注が始まり、それに伴う道路整備や再開発事業も続々と動きだす。五輪関連の工事と復興工事の時期が重なる可能性が高い。そうなれば職人の奪い合いで工事の遅れを招きかねない。

「50年前の東京オリンピックの時は、日本中からいくらでも建設労働者を集めることができたので、突貫工事でオリンピック施設やインフラを整備できた。しかし、今は集めようと思っても国内のどこにも人はいない。どうやって工事を進めていくのかが、大きな課題だ」(大手ゼネコン幹部)

 一方、めじろ押しの大規模施設の計画に、後世への「ツケ回し」を懸念する声も出ている。ロンドンも北京も五輪のメーン会場の客席確保は一部仮設で賄ったが、東京は常設で豪華なフルスペック競技場だ。主会場と想定されている8万人収容の新国立競技場は、総工費1300億円が見込まれる。五輪閉会後のスタジアムは、「サザンオールスターズが毎日コンサートを開いても埋まらない」ともささやかれる。

 豪華な主会場については、日本を代表する世界的建築家の槇文彦氏(85)が、景観問題や建設費・維持費が巨額になる点から、計画の大幅な見直しを求める論文を建築専門誌に発表した。将来、巨大施設の維持管理に都民の税金が回される可能性を指摘したものだ。

AERA 2013年10月7日号