俊才集うシリコンバレー ビジネスの成否を分けるものとは

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俊才集うシリコンバレー ビジネスの成否を分けるものとは

初代モデル「SEED」に乗る徳重徹。排気量50ccの原付きバイクに相当し、フル充電した場合の1回の電気代は約30円で済む(撮影/今村拓馬)
 シリコンバレー。起業家精神にあふれた異能や俊才が世界中から集まる場所を巣立った一人の男が、「EV」(電動輸送機)の世界に革命を起こそうとしている。2010年に電動バイクメーカー、テラモーターズを起こした徳重徹(43)。創業からわずか3年ながら国内で7千台以上を売り、ホンダやヤマハ発動機を抑えて市場のトップに立った。だが、徳重にとって日本は通過点。狙うのは最初から世界市場だ。

 徳重がシリコンバレーにいたのは01年から07年。MBA(経営学修士)を取得後、起業を支援するインキュベーション会社に職を得て、現地企業の技術の売り込みや資金調達に奔走した。ちょうどグーグルが急成長を始め、フェイスブックが産声を上げた時期。周囲では誰もが「次のスティーブ・ジョブズ」を目指していた。刺激に満ちた西海岸にいながら、「失われた20年」の中で閉塞感に覆われる日本が気になっていた。

「経済で米国にリベンジする」と言ったソニーの盛田昭夫、「人間やろうと思えば大抵のことはできる」と説いたホンダの本田宗一郎…。かつて日本にも「ジョブズ」はいた。彼らの存在が日本人に自信を与え、企業戦士を奮い立たせ、世界2位の経済大国を作り上げたのだ。低迷する日本に必要なのは「底力」を呼び覚ます成功体験やロールモデルだと思い至った。

「ならば、その役を自分が引き受けようじゃないか、と。大風呂敷を広げたんです」

 シリコンバレーがベンチャーの聖地たりえるのは、優秀な人材に加え豊富な資金や経営ノウハウを提供するベンチャーキャピタル、業務を支援する法律事務所など、挑戦を支える仕組みが確立しているからだ。といって全員が成功するわけではない。

 成功者ほど「パッションとロジック」のバランスに長けていた。熱意があっても戦略がない、技術はあってもリスクを取らない、では後塵を拝する。徳重も辛酸をなめた。

 改めて起業のタネを探していた頃、シリコンバレーでは新たな産業革命が起きようとしていた。EVだ。EVの構造はガソリン車より単純で、極端に言えば電池とモーター、制御装置を外部から調達し、組み立てれば製造できる。部品点数も大幅に減り、投資負担も小さい。充電インフラなど関連ビジネスも生まれる。今やトヨタが提携を求めるほどの企業になった電気自動車のテスラ・モーターズを始め、商機を見いだした現地のベンチャーが続々と参入していた。

 徳重もその波に乗った。ガソリンバイクでは世界を席巻するホンダやヤマハにとって、EV参入はエンジン技術や系列メーカーの否定につながり、手を出しにくい。日本の近くには排ガスの大気汚染に悩む二輪大国のアジアが広がり、電動バイクの需要が十分に見込めた。

《アップル、サムスンを超えるインパクトを世の中に残す企業になります》

 会社の設立趣意書にはこう書いた。

AERA  2013年9月30日号

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