多くの人は職場で使えない人材、いわゆる「お荷物社員」を目にしたことがあるのではないだろうか。一つの職場でも、世代や境遇によって「お荷物社員」とみなす標的は錯綜する。特に、雇用形態がさまざまで年功序列の考えが根強い銀行では、その相関図が複雑だ。複数の銀行員への取材に基づいてアエラ編集部が作った架空のG都市銀行をのぞいてみたい。

 関西のある支店で、課長席の電話が鳴った。電話の相手が育休中の一般職女性だと知った男性行員たちが、一斉にブーイングを始めた。

「なんやねん、あいつ」

 育休を終えてこの支店に配属された1カ月後に2人目の妊娠が発覚。仕事を教えた同僚の落胆をよそに、体調が悪い、子どもの調子が悪い、と週1、2回は遅刻や欠勤。数カ月でまた産休、育休に突入すると、「資格試験の受験料補助を申請したい」「給与明細を自宅に送ってほしい」など、些細なことで課長に直で電話し、課長の仕事を増やすことでも反感を買った。支店の20~50代の女性たちは独身が多いため、彼女は総スカンを食っている。

 一方で、別の一般職の女性(27)からすれば、派遣社員軍団のほうがよほど厄介だ。

「2人合わせて0.5人分の働きしかしない人が多いです」

 仕事を頼んでも「それ習っていないんで」と断る50代の派遣女性は、新たな仕事を覚える気ゼロ。顧客からの電話にこう言ってのけた。

「私、通りすがりに電話をとっただけなので、わかりません」

 いや、その派遣女性よりも目につく存在が、他にいた。

「次は出向だとわかっている50歳手前の男性上司のやる気のなさといったら。支店長クラスなら支店の成績に応じてボーナスの配分が変わったりするのでまだ働いてくれるけど、課長どまりの人は人の足を引っ張ります」(前出の一般職女性)

 銀行では役員にならない限り、50代半ばには「第2の人生」が提示される。取引先など外部の企業か、子会社や系列会社に出向する「片道切符」だ。給料もポストも定年後いつまで働けるかも、出向先のランク次第。

「どうせ数年後には次のステージに上がるなら、むしろ早く行きたい。そんな状況で今の職場で向上心を持てるかどうか。下の世代から『まもなく退場する人』と見られても仕方ありません」(50歳支店長)

 現役時代に課長どまりだと出向先のランクは落ち、嘱託や派遣で働かざるを得ない人も。この支店にも子会社籍になり派遣されてきた50~60代のスタッフが数人いる。彼らは重要な仕事を与えられず期待もされていないので「お荷物未満」だ。

AERA  2013年9月23日号