湯灌師「私でも誰かの役に立っているんだという充実感は、ほかの仕事では絶対に味わうことができない」何人もの先輩が辞めていった。けれども一度この仕事に就いた人の大半が、この世界に戻ってくる(撮影/比田勝大直)
湯灌師
「私でも誰かの役に立っているんだという充実感は、ほかの仕事では絶対に味わうことができない」
何人もの先輩が辞めていった。けれども一度この仕事に就いた人の大半が、この世界に戻ってくる(撮影/比田勝大直)

 死を迎えた人を送り出すためには、様々な仕事が存在する。その中から、湯灌(ゆかん)師という職業を選んだ女性を取材し、仕事についた経緯などを聞いた。

 今年33歳になる持井香恵(仮名)の仕事は、葬儀に際し故人(遺体)を入浴させ洗顔、洗浄を施す湯灌という仕事で、「湯灌師」と呼ばれる。現在、持井は、大手葬儀社の下請け業者として、遺族からの要望がある場合に限って自宅、もしくは病院、警察署などへ駆けつける。毎朝、定時に届くメールの送り主は元請けの葬儀社からで、今日、何体の湯灌を行うのかが書かれている。

 この日、向かったのは、家族に看取られ老衰で大往生した87歳の女性の自宅。現場に到着するなり、もう一人の同僚と共に遺族に挨拶。すぐに作業の準備に取り掛かる。湯灌の基本的な手順は次の通りだ。

 まず、通常のお風呂とは逆の手順で、持ち込んだ専用のバスタブに水を張り、給湯器で沸かしたお湯を注いで適温の状態を作る。大判のバスタオルで遺体を包むようにしてバスタブへ移動。専用のボディーソープを使って洗体後、洗髪と洗顔を行う。

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