一方、同じ東京都内でも、23区とその他の市町村とでは保険料率が異なるため、同じ年収でも支払う保険料は違う。例えば、旧ただし書き所得が228万円で、40代の夫と30代の妻、子ども1人の家族3人の場合、東京都多摩市では保険料が年26万5440円のところ、葛飾区では年37万1760円。その差は10万円以上になる。

 なぜ、自治体によって保険料の差が生じるのか。国保の問題に詳しい、慶應義塾大学経済学部の土居丈朗教授が言う。

「一般的には会社を定年退職した後に、健康保険組合から国保に移ります。年齢とともに病院にかかる人が多くなるので、高齢者の加入率が高い国保は、その分保険料を上げないと、医療費をまかなえない構造になっています」

 地方の市町村の国保は、個人事業主よりも、会社を退職した高齢者(75歳未満)と、パートやアルバイトで働く非正規雇用など、所得の低い加入者が多い。保険料率を高くしてしまうと支払うことができない人が続出してしまうので、保険料率を低く設定し、税金を投入して赤字を抑える傾向がある。これに対して、高所得者が比較的多く住む都市部は、高い保険料率のまま、税金を投入しない自治体もある。

「過疎地で高齢者が多い自治体は、医療費が増大しすぎて、税金を投入しても支出に追いつかない場合もあります」(土居教授)

 この格差解消のため、政府の「社会保障制度改革国民会議」が、今年8月に打ち出したのが、「国保の運営主体を市区町村から都道府県に移す」という案だ。都道府県内の保険料が統一された場合、東京都では、保険料は年8万730円と見込まれる。だが、土居教授は言う。

「保険料を低く抑えているのは税金を投入して、住民が病院にかからないよう健診を充実させるなど、独自の対策がうまくいっている場合もあります。一律にすると、健全運営している自治体からは批判が出るでしょう」(土居教授)

AERA 2013年9月30日号