企業は、より多くの社員が利用できる制度をいかに実現できるか知恵を絞る(撮影/今村拓馬)
企業は、より多くの社員が利用できる制度をいかに実現できるか知恵を絞る(撮影/今村拓馬)
小室淑恵(こむろ・よしえ)ワーク・ライフバランス代表取締役社長。残業時間削減など働き方に関するコンサルティングを手掛ける。延べ900社を超える組織を支援。著書に『6時に帰るチーム術』など(ワーク・ライフバランス提供写真)
小室淑恵(こむろ・よしえ)
ワーク・ライフバランス代表取締役社長。残業時間削減など働き方に関するコンサルティングを手掛ける。延べ900社を超える組織を支援。著書に『6時に帰るチーム術』など(ワーク・ライフバランス提供写真)

「成果主義」というと売り上げの高さを比べがちだが、本当のところはそうではないという。本当に効率の良い働き方とはどんなものなのか、「ワーク・ライフバランス」(東京都港区)の社長・小室淑恵さんに話を聞いた。

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 多くの管理職は、年度末に1円でも多く売り上げを稼いだ営業マンを評価するのが「成果主義」だと思っています。しかし、真の成果主義は、時間当たり生産性の高い人を評価するもの。どんなに売り上げが多くても、時間当たり生産性が低ければ残業代などコストがかかってしまいます。長時間労働を減らすのに、部下を評価する管理職がカギとなるのはそのためです。

 その際、管理職に求められる役割は、自らワークライフバランス(仕事と生活の調和)を実践すること。特に、ライフ(私生活)が充実していることをチームの皆に「うらやましい」と思わせてください。率先して早く帰り、趣味や自己研鑽、地域のボランティア…それらを行い、充実したライフを送っている姿をチームに見せ、一人ひとりの意識を変えてほしいのです。

 企業は付加価値をつけなければ生き残れない時代。必要なインプットは、仕事外の時間で行うのが大切です。たとえば、オフタイムの何げないママ友トークが事業のアイデアをくれる場合もあります。自分の引き出しが満タンの状態で出社して初めて、アイデアに満ちたアウトプットを実現できるのです。そのためにも管理職は自らがロールモデルとなり、残業時間を減らすことの効用をチームに伝えてください。また、部下の育成も大切。人を育てなければ、残業時間を減らし業績アップにつなげることはできません。

 チーム全員が安心して働ける環境を作るのが管理職の仕事。日ごろから長時間労働を見直し、チームの成果を最大化する時間の使い方をすることで、競争力がつき、ひいてはサスティナブル(持続可能)な企業になっていきます。あなたは「結果を出して定時で帰る管理職」として、社内で高く評価されるでしょう。

AERA  2013年9月16日号