汚染水漏れのあったタンク周辺を調べる原子力規制委員会のメンバーら(8月23日、福島第一原発) (c)朝日新聞社 @@写禁
汚染水漏れのあったタンク周辺を調べる原子力規制委員会のメンバーら(8月23日、福島第一原発) (c)朝日新聞社 @@写禁

 五輪招致に沸く日本だが、だからこそいよいよ無視できないのが、福島第一原発の汚染水流出問題。東電のコストカットが原因の一端となっているこの問題に対し、国費が投入されることが決まった。しかし現場からは「ふざけてるとしか思えない」「当たり前のことができていない」と、いまだ怒りの声があがっている。

 いま起きている汚染水問題には、2種類ある。一つは、福島第一原発に流れ込む地下水が、地中に漏れ出している汚染水と混じり、海へ流出している問題。資源エネルギー庁の試算では、1日300トンにのぼる。

 もう一つが、8月19日になって発覚した、敷地内のタンクから300トンの汚染水が漏れていた問題だ。タンクは、鋼材をボルトでつなぎ合わせただけの「フランジ型」という簡易なもので、約1週間で製造できる。耐用年数は約5年で、敷地内に約1千基あるタンクのうち、約350基がこのタイプだ。

「普通のタンクは、船を造るように、それぞれの部品を溶接するものです。しかし、フランジ型タンクは、部品をクレーンで吊(つ)り上げ、あとは鳶(とび)職人たちがボルトを締め付ければ出来上がりという、ふざけているとしか思えない仕様。いつか漏れるだろうと思っていました」

 と指摘するのは、福島第一原発の協力企業社員として収束工事にかかわるT氏である。 今回の政府の対策では、遮水壁に国費を投入するが、タンクについては「溶接型」に変えることを示しただけだ。

「そもそもタンクに水位計がついていれば、汚染水漏れはすぐにわかる。そんな当たり前のことさえできていないのが問題なんです。このまま仮設タンクを何年も使い続けるようでは、トラブルはまた起きるでしょう」

 東電はこれまで、10人ほどで約1千基のタンクを見回っていたが、汚染水漏れが発覚して60人に増やすことを決めた。すると、新たに4カ所で高い放射線が検出され、最大毎時約1800ミリシーベルトが測定された。人が4時間ほど浴びると死亡する線量だ。この調子でいくと、まだ発見されていない漏れが次々と見つかりそうだ。

「正直、パトロールといっても人数は少なかったし、周辺の放射線量も高いから、適当なものでした。しかも、タンク周辺は雨が降ると水たまりができて、何が漏水なのか判別がつかない。今回の問題でゼネコンやタンクの製造元、パトロールの下請けまでこっぴどく叱られました。でも、これも、そもそもコストカットで人数を削った末の惨事。いまや猛暑の中、見回りが倍増して現場は悲鳴を上げています」(東電関係者)

 しかも今後、国費が投じられたとしても、すぐにもろもろの問題が解決するわけではない。元作業員K氏がこう語るのだ。

「コストカットの弊害が是正されても、きちんと施工できる人がいなければ何も変わりません。たとえば、継ぎ目を固定するボルトは、ただ締めれば良いものではなく、締める順番や力のかけ方が決まっている。しかし、人手不足で技術のない作業員もたくさん交じっているので、手順が徹底されず雑な工事になっています。今後、急いで工事を進めたら、ますますトラブルが増えるのは目に見えている」

AERA  2013年9月16日号