人生の、とりわけ就職や出世の場面で強みになるのが学歴。しかし場所によって求められるものは異なるようだ。

 高学歴は得だと常々感じてきた、外資系企業ディレクターの男性(43)。関西外国語大を卒業してパナソニックに入社した。最初の配属先が大阪本社だったのは京大や大阪大卒ばかりで、単科大学卒の彼は支社。社内での人数や結束力に差があるため、その後の昇進などでも「見えない壁」があると感じた。

 転職し、英国の政府組織に入ると今度は、MBAがものをいうことを実感した。同僚はほとんどがMBAホルダー。男性は専門性がないとみなされ、任される仕事は責任を伴わないものが多かった。そこで夜間に法政大のMBAコースに通い、マーケティングを専門的に学んだ。学位取得後は状況が一変。マネジャー職に昇進し、会議でも意見を求められるようになり、広がった人脈が仕事にも生きた。

 だがその後、引き抜きで日本の省庁に移ると、「法政」は意味を持たなくなった。同僚の間では、露骨に「彼は東大だから出世する」という話が出て、事実その通りになることが多かった。東大卒であれば、仕事内容と直接関係のないドイツ文学専攻でも何でも、有利に働いた。

 数カ月前に現在の外資系企業に転職した。MBA資格や一貫してマーケティングに従事してきたことが評価され、給与は省庁時代の倍。学歴は自分に有利にも不利にも働いたが、やはり人生を大きく左右すると思う。

「学歴は自分をブランディングする一つの手段。最も有効に働く環境を見つければ、強力な武器になると思います」

AERA 2013年9月2日号