夫婦間のちょっとしたケンカをきっかけに、家を出てしまう「プチ家出」。冷静になるためには時には有効、との見方もある。一方で、ケンカが深刻化してしまった夫婦には少し長期の家出も効果的なようだ。

 恋人・夫婦仲相談所の二松まゆみさんは、ケンカが深刻化した夫婦には、どちらかが実家や友人の家、ウイークリーマンションに1カ月ほど身を寄せる「ロング家出」を勧めている。

「同じ部屋にいると怒りが増幅するばかりだが、離れると、愛し合っていた頃を思い出したり、相手を失った時の寂しさを想像したりしやすい。いわゆる『回顧療法』として効果的です」

 お金がない、行き先がない、子どもがかわいそう──。二松さんによると、それらは「言い訳」。行動に移すかどうかは自分の本気度をはかるバロメーターであり、難易度が高い家出ほど相手への影響力は大きい。

「毎回ケンカをしてはウヤムヤになり、夫婦仲が悪いまま年を取っていいのか。我慢してセックスレス夫婦を続けますか、それとも賭けに出ますか」

 自営業の女性(40)は長女が1歳になる頃、1カ月間にわたって母子で家出をしたのを機に、夫が180度変わった。

 長女が生まれても仕事中心の生活を続け、飲み会も減らさなかった夫。口論になった翌朝、置き手紙をしてベビーカーを押し、新幹線に飛び乗った。別れるつもりで実家に戻った。

 夫から連絡はこなかった。女性はひたすら待った。20日過ぎた頃から「いつ帰ってくるの」という電話やメールが届き始め、次の週末に実家に迎えに来た。そこで初めてじっくり話し合い、やり直すことを決めた。いまや夫は早く帰って長女を風呂に入れ、毎朝ホテルのような朝食を作ってくれる。

「家出を境に夫が変わったのは確かですが、夫は言えばわかる人だったのに、私がぶつかるのを避けていた。夫婦のコミュニケーションを変えたきっかけが家出なのかもしれません」

AERA  2013年8月12-19日号