子ども同士のいじめ、トラブルの「証拠集め」のために、親が子どもにボイスレコーダーを持たせる。こうしたケースが、最近では珍しくなくなってきているようだ。

 千葉県に住む小5男子の父親(48)は昨年末、大手中学受験塾に通う息子が、授業の合間の休み時間に、同級生の男子グループからちょっかいを出されていると聞かされた。

 首謀者は2人、それに4、5人の児童が加わっていたようだ。おなかをたたかれ、「メタボだね」と言われるのはまだ「からかい」の範囲と言っていいかもしれないが、頭をはたかれ、首を絞められ、「殺す」と暴言を吐かれていると聞いた。後ろの席に座ったグループの子どもから、息子が先のとがった鉛筆で背中を刺されたこともあったという。父親は言う。

「塾のクラス担任の先生に一応、『いじめられているようだ』と相談しましたが、実はそのときも先生とのやりとりをこっそり隠し録りさせてもらいました。密室でのやりとりなので、後に『言った、言わない』ともめることもあると思ったし、先生は『善処します』と言ったけれど本当かな、と信じられなかった部分もあった」

 実際、息子のカバンのなかに、ピンマイクをつけたボイスレコーダーを忍ばせて、塾での様子を録音させたところ、担任との相談後も「いじめ」が続いていたことがわかった。授業、休み時間を含めて1日4~5時間くらい録音し、内容を確認したところ、ほとんどは先生のいない休み時間にちょっかいを出されていることがわかった。幸いにしてその後、クラス替えがあり、首謀者グループとは別クラスになったため「いじめ」はやんだが、この父親は息子に「隠し録り」をさせたことを後悔はしていないと言う。

「大津市のいじめ自殺事件などを見ればわかるように、いじめた側は8割がた、しらばっくれるでしょう。うちの息子の件でも、塾の先生は『休み時間になるべく気をつけて、子どもたちの間に入るようにします』と言っておきながら、入ってくれなかった。親が始終、子どもの後ろをついてまわることはできないし、録音を聞くことでわかることがたくさんある」

AERA 2013年8月12-19日号