脳波にあわせて動く「necomimi」。アメリカ、欧州、台湾や香港でも販売している。写真はリラックス中の開発者・なかのかなさん(撮影/写真部・岡田晃奈)
脳波にあわせて動く「necomimi」。アメリカ、欧州、台湾や香港でも販売している。写真はリラックス中の開発者・なかのかなさん(撮影/写真部・岡田晃奈)
こちらは集中している状態(撮影/写真部・岡田晃奈)
こちらは集中している状態(撮影/写真部・岡田晃奈)

 切れ長の目尻がキュッと上がった気の強そうな女の子、「ネコ目女子」。でも、意外に甘えん坊な一面もありそうな落差がいいんだそうだ。女の子の間でネコ目メイクが流行したり、男性誌ではネコ目女子の特集が反響を呼んだりと、その人気は高まりつつある。

 そもそも、アニメなどサブカルの世界で「ネコキャラ」の人気は高い。アニメや漫画で頻繁に出てくる、ネコ耳やしっぽをつけて登場する女子たちには、あらゆる「理想の女性像」が投影されている。

 たとえば「あそびにいくヨ!」(2003年~)のエリスは、ネコ耳としっぽがある少女。プロポーションは抜群で天然系という「完全無欠(?)の属性」(ウェブサイトから)。「シュタインズ・ゲート」という作品には、ネコ耳をつけた「フェイリス・ニャンニャン」という、メイド喫茶の人気ナンバーワンの女の子が出てくるが、小悪魔系でありながら、語尾に「ニャン」をつける甘えキャラでもある。

 しかし、男子の期待を一身に浴びるネコ目女子だが、妄想はさておき、現実世界ではどんな人たちなのだろう。

「ネコ系女子は実際に付きあってみると、結構面倒くさいタイプではないでしょうか」

 こう話すのは、電通のプランナー、なかのかなさん(32)だ。なかのさんは、neurowearプロジェクトで人気商品「necomimi」を開発した。額につけた脳波センサーで、集中とリラックスを感知し、ネコの耳が動くという。人見知り、感情を表すのが苦手、緊張すると話ができない、そんな自分の中の「ネコっぽさ」を逆手に取り、商品開発につなげた。

 集中すると耳が立ち、リラックスしているときは耳が寝る。集中とリラックスが共存すると耳が寝たり起きたりと動く。

「実際のネコの耳の動きには関係ありませんが、隠している感情が耳の状態に現れるというアイデアです。相手に集中しているのに言葉が出ないときに、耳はピンと立ってしまうんです。これをつけると、おじさんであろうと万人がかわいくなるんですよ」

「necomimi」は11年、米タイム誌の「ベストインベンション(最高の発明)50」の一つに選ばれ、昨年4月に商品化された。

「感情をうまく表せないネコ系女子は、心の底にお姫様願望を抱えているのかもしれません。他人に自分の感情を推し測ってほしいと思っている。奥手なようで上から目線ですよね」

 こうした「ネコ系」女子の隠れた切り札が、「ニャン言葉」だ。人前ではクールに構える彼女たちが、夫や彼氏の前では「おなかすいたニャン」というふうに、語尾がネコ化する。周囲の20代、30代女性10人に聞き取り調査をしたところ「ニャン」とか「ワン」をつけて甘えたことがある人が7人もいた。

 今、若い世代はとりわけ、仕事もファッションも男女の垣根がなくなりつつある。一方で、恋愛にも奥手で、リアルに女性と付き合うのが、億劫な男性も増えている。そんななか、忘れかけていた性差を感じさせ、恋愛力をかきたててくれるのが、ネコ目女子なのかもしれない。

AERA  2013年7月29日号