リングネームは母親がつけた。「真っ直ぐに信じた道を突き進め」と(撮影/福尾行洋)
リングネームは母親がつけた。「真っ直ぐに信じた道を突き進め」と(撮影/福尾行洋)

 5月19日、またひとり日本人のボクシング世界チャンピオンが誕生した。世界ボクシング評議会(WBC)女子フライ級、真道(しんどう)ゴー(26)。王者のハンガリー選手に対し終始自分のペースで攻め続け、フルマークの判定勝ちだった。

 試合後の控室で「前向きにありのまま戦うことで、悩みを持つ人に『自分もがんばろう』と思ってもらえたら」と語った。

 真道さんは、女性の身体に男性の性自認を持つ「トランスジェンダー」だ。日本ボクシングコミッションによれば、選手自身の性自認には関係なく、戸籍の性別に応じて試合ができる。

和歌山で生まれた真道さんは、幼いころから、「女の子」であることに違和感を持っていた。大学で女性の先輩と付き合った。女性を好きになる自分をうまく周囲に伝えられず、嫌がらせを受けた。相手からも「幸せにはなれない」と別れを告げられた。

「生きてても誰かの重荷にしかならない。こんな風に生まれた自分が悪いのかと思っていた」

 休学し、大阪・新地のバーで働きはじめた。家もなく友だちの家や店で寝泊まりする日々。ある時、同僚に「もっと自分を認めてあげて」と言われた。

「ありのままの自分で生きたい。厳しい両親に本当のことを言えば『出ていけ』と言われるかも。でもそれもありのままの姿」

和歌山に戻り母親に自分の性を打ち明けたのが20歳の時。「生んだ子どもに変わりない。それより今のあなたはあなたらしくない」と泣かれた。

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