グローバル化を目指す企業にとって必要不可欠なのが外国人社員の登用。しかし現状では十分に活用できているとは言えないようだ。

「受け入れ態勢が不十分でした」

 ある人材関連会社の社長はそう反省の弁を漏らす。将来のアジア進出をにらみ、韓国ソウル大学卒の学生を採用したが、入社わずか1年で辞めてしまった。日本語も堪能で、営業成績はすぐトップクラスに。だが、ある時、こう聞かれた。

「自分はいつになったらマヌケな課長の上に立てますか」

 社長は、年功色の強い自社の職能資格制度を説明し、「早くても6、7年後かな」と答えたという。辞表は、その翌日に届いた。社員はその後、サムスン電子に転職したという。

 海外の優秀な人材は上昇志向が強い。日本人のような「就社」意識はなく、転職を重ねてキャリアを積もうとする。いったん採用しても、将来のキャリアパスを示せなければ、あっさりと辞めていく。

 日本では最強の営業力を誇るリクルートも、2007年に中国で始めた人材紹介事業は当初、大苦戦した。原因はマネジャーが日本人だったから。中国人社員が客先でつかんできた細かなニーズが、言葉の壁もあって伝わっていなかった。中国人マネジャーがいないことも、「頑張っても昇進の余地がない」と、社員のやる気をそいでいた。そこで4年ほどかけて中国人マネジャーを養成。成果報酬も上積みしたところ、1人当たりの売上高は5割向上したという。

AERA  2013年7月8日号