年々華やかになる名人戦前夜祭。「この日のために」と新調した着物やドレスを着た将棋女子でにぎわう。翌日から厳しい対局が控える羽生・森内両氏もにこやかに撮影や会話に応じていた。トップ棋士の気配りも、将棋女子を支える大切な要素だ(撮影/写真部・慎芝賢)
年々華やかになる名人戦前夜祭。「この日のために」と新調した着物やドレスを着た将棋女子でにぎわう。翌日から厳しい対局が控える羽生・森内両氏もにこやかに撮影や会話に応じていた。トップ棋士の気配りも、将棋女子を支える大切な要素だ(撮影/写真部・慎芝賢)
撮影/写真部・慎芝賢
撮影/写真部・慎芝賢

「羽生さんガンバって~!!」
「森内さん、踏ん張って!」
「あ、あの森内さんのオヤツのショートケーキ、同じの食べた」

 知力の限りを尽くして戦う将棋の名人戦。森内俊之名人と羽生善治三冠の熱戦が続いている“場外”では、女たちの熱い戦いも繰り広げられた。名づけて「将棋女子」。黄色い声援が、ツイッター上で盛り上がった。

 いま、若い女性の間では空前の将棋ブームである。対局会場や将棋教室に行っても、名人戦の前夜祭などに足を運んでも、そこには追っかけさながらの女子たちの姿がある。

 先の名人戦では4月、第1局前日の夜に会場となった東京都文京区のホテル椿山荘東京で「前夜祭」が開かれた。将棋女子の盛り上がりに椿山荘は、「前夜祭パック」「封じ手(2日にわたる対局の2日目の1手目を封印したもの)を見るツアー」なども発売。宿泊代に各種イベントがセットになって価格帯は7万~15万円也。数十セットは発売3~4日で完売した。「女性ファンの増加の影響だと考えます」(椿山荘広報)という。

 会場にはめいっぱいオシャレをした女子たちがあふれた。将棋女子にとっての“黄金カード”といわれる組み合わせ。羽生、森内両氏の前には写真撮影や握手を求める長蛇の列ができた。

 前夜祭デビューのため、椿柄の着物まで新調した吉本智子さん(36)は、着物代や着付け代などしめて約10万円かかったが、「年に一度のお祭りですから」。お目あての羽生氏と、しっかり写真にもおさまった。

 石川県から来た主婦(40)は、「椿山荘のパックはお高いので近くに宿を取り、当日ホテルの別室で行われる大盤解説(進行中の対局を、プロ棋士が同時進行で解説するもの)に来ます」と、涙ぐましい努力。

「将棋界は、プロの方々がファンをとても大切にしてくださる」

 前夜祭会場には多くのプロ棋士の姿が。その元に足を運び、会話を楽しんでいた。

AERA 2013年7月15日号