今や書籍だけではなく、DVDや生活雑貨、家電に至るまで購入できるネット書店amazon。そんな便利なamazonで、商品を衝動買いしてしまう困った習慣「アマゾン依存症」なるものを抱える人が増えている。衝動買いの背景には、クリックだけで購入できる手軽さや、その人の購入履歴からみたおすすめ商品を提示する「おすすめ機能」など、様々な要因があるが、そのひとつとして「当日配送」もあるのではないだろうか。

 注文時に「当日お急ぎ便」を選択すると、アマゾンは当日に送ってくれる。午前中に注文すれば、まずその日のうちに届く。当日お急ぎ便は注文ごとに500円かかるが、年会費3900円の「プライム会員」は、注文ごとの料金がかからない。だが、この便利さも、新たな厄介を引き起こす。

「○月○日 ○曜日 にお届けするには、今から□分以内に注文を確定してください」と出る。時間が進むにつれ、いつの間にか中身そっちのけで、当日中に商品が届くことを優先する心理になる。気づけばパソコンでクリック、スマホにタッチ。

「たばこが体に悪いと分かっていても、やめられない人は多い。脳の性質上、行動を起こして『報酬』が得られるまで短時間のものには依存しやすい。たばこは取り出してライターに火をつければ、すぐ報酬(たばこを吸うこと)が得られる」(『二重洗脳─依存症の謎を解く』の著書がある磯村毅医師)

 だが、買い物依存は以前からあったはずだ。アマゾン依存は何が違うのか。『衝動買いさせる技術』の書があるマーケティングコンサルタントの松本朋子さんは、「衝動買いや買い物依存は女性に特徴的でした」と言う。

 ところが、周囲を見渡すとアマゾンにハマるのは男性のほうが多い気が──。この理由を、買い物依存症の患者を長く診てきた精神科医は説明する。

「女性は、商品を買うまでのプロセスを楽しむ傾向がある。店員からの『お似合いですね』という言葉が聞きたくて買い物するといったようにです。男性は過程ではなく、車や時計など、商品そのものへの関心が強い傾向にある」

「注文即配送」のアマゾンに、このプロセスはない。

「買い物プロセスを省いたネット通販は増える一方。買い物依存の男性も増えるのではないでしょうか」(同)

AERA  2013年7月1日号