東村山市立野火止小学校朝学習の10分間で、先生手作りの「算数基礎ドリル」に取り組む6年生。早く解き終えた子は、担任が黒板に書いた追加の問題に挑戦する(撮影/今村拓馬)
東村山市立野火止小学校
朝学習の10分間で、先生手作りの「算数基礎ドリル」に取り組む6年生。早く解き終えた子は、担任が黒板に書いた追加の問題に挑戦する(撮影/今村拓馬)

 小学校の学習内容に関して自治体や学校の裁量にゆだねられる部分が増えたため、近頃は独自の指導を行う公立小学校が見られるようになった。しかしそんな風潮に対して、専門家からは厳しい意見も飛んでいる。

 アエラは全国60自治体の教育委員会にアンケートを送り、独自の取り組みや工夫を自由にアピールしてもらった。48市区から寄せられた回答は、低・中学年の英語教育ひとつをとってもバラバラだった。

 例えば、「横浜版学習指導要領」「京都市スタンダード」など、学習指導要領の地域版を作っているところ。プロ棋士による囲碁(東京都中央区)などユニークな授業があるところ。独自の漢字検定(大田区)や「小学校児童英検」(北九州市)に取り組むところ…。

 小中一貫教育を進める自治体では、カリキュラムや教材を作ったり(町田市、堺市など)、小中学校間で先生が行き来して授業をしたり(八王子市、三鷹市)。各学校が「創意工夫ある教育活動」を提案し、市教委から追加予算の配分を受ける(川崎市など)ことで特色づくりを推進する自治体もある。

 夏休み期間や土曜授業の設定は、自治体だけでなく学校によっても異なるため、地域のスポーツクラブの練習が成り立たなくなる事態も起きている。

 品川区に住む会社員女性(45)は長男がこの春に公立小を卒業するまで、学校選択制による差別化戦略に振り回されてきた。

「違いを打ち出さなければというプレッシャーからか、学校も先生も『がんばってる風』のアピールばかり。学力をつけるためには地道な反復学習こそ大事なはずなのに、親もつい目立つ取り組みに気を取られてしまう。あの学校に行かせたらもっと英語ができたんじゃないかとか、あの学校はサイエンス教室があるらしいとか、ずっと心穏やかでいられませんでした」

 教育評論家の尾木直樹さんは、こうした特色づくりは「現実に根差していないパフォーマンスよ」と手厳しい。

「日本人が目指す学力はこれだ、というビジョンもない中で、各学校が特色を出すなんて無理な話。学校選択制で生き残るのに各学校は手一杯。そんな学校の中からいい学校を選べるわけないでしょ」

AERA 2013年7月1日号