一報を聞き、大泉第一小学校周辺に保護者らが駆けつけた。「危険」を考え出したらきりがなく、親の心配は尽きない (c)朝日新聞社 @@写禁
一報を聞き、大泉第一小学校周辺に保護者らが駆けつけた。「危険」を考え出したらきりがなく、親の心配は尽きない (c)朝日新聞社 @@写禁

  東京都練馬区の区立大泉第一小学校近くの路上で児童が切りつけられた事件では、襲われた3人のうち、6歳の男児2人が首に軽傷を負い、7歳の男児は右ひじに筋肉まで達する重傷を負った。

 現場はすぐそばを東京外環自動車道が走り、マンションや一戸建てが密集する住宅街。人通りも多く、小学校の正門近くで教師の目の届きやすいと思われる場所だった。 それでも、事件は起きた。

 日本こどもの安全教育総合研究所の宮田美恵子理事長は、学校の正門前は「むしろ盲点だ」と指摘する。

「2001年に起きた大阪教育大学付属池田小学校の無差別殺傷事件以降、学校内への侵入に関してはどの学校も神経質になり、施錠やパトロールを強化していますが、正門を出てすぐというのは、学校と地域をつなぐ地点で、防犯上は盲点となっている。09年に前橋市で男子児童が襲われた事件も、切りつけられたのは正門を出てすぐのところでした」

 東京都の学校危機管理マニュアルの策定に携わった、学校安全教育研究所の矢萩恵一事務局長も、学校の近くが防犯の「空白地帯」になっている可能性があると話す。

「諸外国では校門を一歩出たら家庭の責任だが、日本では通学路の安全を誰が守るかはあいまいになっている。特に正門を出てすぐは、学校の先生の目は離れており、かといって保護者の目も届きません」

 保護者や学校関係者にとって悩ましいのは、1人で歩かない、薄暗いところを通らないといった一般的な犯罪対策が、今回のような無差別に大人数を狙った事件の場合では、むしろ逆効果になる可能性がある点だ。

「よく、襲われたら大声を出す、防犯ブザーを鳴らす、などといった防犯教育がされているが、いくら訓練をしていても緊急時には大人でさえ足がすくんで頭が真っ白になる。こういう事件が起きるたびに集団下校の是非が問われるが、誘拐や性犯罪の抑止には集団下校は一定の効果があるわけで、どんな犯罪の対象になるかが誰にも予想できない以上、どんな防犯策や防犯教育がよいかを一概に言えない点が非常に難しい」(前出の宮田さん)

AERA 2013年7月8日号