「左翼のクソども…」という復興庁官僚の暴言ツイートが話題となったが、官僚たちの呆れた言動は、いまに始まったことではない。やっぱ、キャリア(高級官僚)は違うわー。そんなふうに人々をうならせる発言が最近、相次いでいる。

「笑うな!」「黙れ!」

 居酒屋で気の置けない仲間に冗談まじりに言うのではなく、国際会議の場で各国代表たちに向かって真顔で怒鳴りつけたのは、上田秀明・人権人道担当大使(68)。5月22日にジュネーブで開かれた、国連の拷問禁止委員会での一コマだ。

 東京大学から外務省に入り、ポーランドとオーストラリアの大使も務めた。笑いの的にされた経験が少ないからなのか、自分の話の途中でクスクスと笑い声が上がると瞬時に激昂。

「ドントラフ!」「シャラップ!」

 とどやし、見事に会議場に静けさを取り戻した(この模様はユーチューブなどで見られる)。ただ、もともと「笑いの種」を提供したのは上田氏自身だ。

 警察・検察の取り調べに弁護人が立ち会えないなど、日本の刑事司法制度の前近代性は、国際的にも有名。10カ国の委員が、自白の強要がないかなどを審査する今回の会議でも、何人かの委員が問題視した。中でも、モーリシャスの委員(同国の最高裁判事)は、日本の自白偏重ぶりを「中世の制度のようだ」と痛烈に批判した。

 日本の名誉が汚されたままではたまらんという愛国心と使命感からだろう。アフリカの小国(モーリシャスは東京都とほぼ同じ面積の島国で、人口約130万人)に指弾され、沽券にかかわると計算したのかもしれない。ともかくも、我らが代表の上田氏は会議でこう宣言した。

「日本は中世の国ではない。この(人権)面では最も進んだ国の一つだ」

 誰もが呆れている相手が、大まじめに「おいらは一番」と言い出すのだから、居合わせた人はクスッとするしかなかっただろう。それなのに…。傍聴していた、日本弁護士連合会代表団の小池振一郎弁護士が言う。

「同じ日本人として気恥ずかしかった。どこか正しい部分があるのではないかと、批判を真摯に受け止めることができないわけですから」

AERA 2013年7月1日号