アベノミクスで一時は上り調子だった相場は、いまや乱高下を繰り返す不安定な状況が続く。これから、いったいどうなるのか。専門家は次のように話す。

 みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは、アベノミクス変調の要因として(1)過熱感の高まり(2)長期金利の不安定化(3)成長戦略への失望の3点を挙げる。

「そして、何よりも問題なのが、黒田東彦日銀総裁による異次元緩和が国債市場を壊してしまったことです」(上野氏)

 実際、国債市場は危機的状況を迎えつつある。ある銀行幹部が、東京・日本橋の日銀本店の方角を指さしてこう言った。

「あっちの方向にブタがいっぱいいます」

 ブタとは、金融用語で「ブタ積み」のこと。つまり、銀行が日銀口座に余計に預金を積んでいる、という意味だ。

「長期金利の乱高下に嫌気した銀行が国債を売っていますが、そこで得た現金も大半は、アベノミクスがいうような株式や融資に回ることはなく、結局は日銀の手元に戻って眠っているんですよ」(先の銀行幹部)

 1千兆円もの借金を抱える政府としては、銀行に国債をどんどん引き受けてもらわないと困る。国債への需要が減れば、価格が下がって長期金利が上がる。一方、国債価格下落による将来の損失発生を恐れる銀行は、これを“売り逃げ”の良い機会と捉えて、国債市場からの撤退を進めている一面もある。その結果が「ブタ積み」なのだ。

 国債の利回りに連動する長期金利は上がり、住宅ローンもプライムレートも上昇した。黒田総裁に打つ手はなく、「景気が上向くのだから長期金利上昇は当然」との容認発言が、相場をさらに不安定化させる。完全な悪循環である。

AERA 2013年6月24日号