オーストラリア戦前日に代表チームに合流したにもかかわらず、強い存在感を示した(写真部・山本正樹)
オーストラリア戦前日に代表チームに合流したにもかかわらず、強い存在感を示した(写真部・山本正樹)

 5年連続のW杯への出場を決めたサッカー日本代表。喜びに沸く日本だったが、得点を入れた本田圭佑は翌日の記者会見で厳しい言葉を口にした。

 記者会見で「世界一になるための課題は?」と問われた本田は、それに先だって今野泰幸が言った、「ビッグクラブでプレーしている選手たちと一緒にプレーするのはすごく楽しい」という言葉を引き合いに、「(香川)真司のように、ほんとのトップクラブでやっている選手がここにはいる。ただ、そうじゃないリーグやクラブでやっている選手にも、やれることがあると思う。そこを今野選手みたいに、あこがれみたいな気持ちで見てもらったら困る」と語った。

 だが、それを聞いた今野は、「世界で勝つことを考えているから要求が高い」と前向きに受け止める。

 本田流のリーダーシップは、日本代表という集団を心理的に前へ動かす力になり始めている。一方で、この予選を通して戦力としての重みは確立された。日本代表は「本田依存症」とまで言われるようになった。あたかも本田の存在感の大きさが危険なことでもあるかのように。

 アジア予選で本田が出場した6試合は4勝2分けで、欠場した7試合は3勝3敗1分け。親善試合でも本田不在のブルガリア戦は完敗に近かった。その事実を、選手たちは強く意識している。たとえば今野は、「本田抜きの試合はやってやるという気持ちが強い。絶対負けないぞと思う」と話していた。その気持ちの強さが裏目に出ているという影響もあるのかもしれない。

 本田不在のとき、日本はチャンスの数も増えるがピンチも増える傾向がある。攻撃の内容を見ると攻撃の軸は香川だ。香川はドリブルやボールなしでのランニングで相手陣に向かっていくとき、スピードが速い。それが彼の特徴で強みでもある。周りもそれに合わせて動く。

 それがうまくいったときには、世界の上位国の守備陣でも手を焼くだろう。しかし、スピードアップしようとしたときに相手に球を奪われ逆襲に転じられることも多い。前掛かりになった選手たちはいっぺんに置き去りにされる。

 つまり本田不在のときに日本代表が抱える問題は、「本田依存症」ではなく、香川に頼りすぎたり、逆襲への備えがおろそかになっていることが原因と見た方がいい。

AERA 2013年6月17日号