パナソニックやシャープなど、日本の終身雇用の象徴とされてきた企業が次々にリストラ策を発表した。「会社にしがみつけない」という現実は、セカンドキャリアの動きを加速させる。

 米国の大学を卒業した男性(48)は、1987年、バブル景気の最中に大手電機メーカーに入社した。当時は日本企業が世界の中で最も輝いていた。英語が堪能で外資系企業も選べたが、日本企業の経営や人事施策を学びたいという一心で就職。営業や広報を経験し、四半世紀がたった。状況は一変した。

 ここ数年は海外向けの広報を担当してきたが、海外から日本企業の情報自体が求められていない。どんなに努力しても結果は出なかった。それでも会社からは成果を求められ、評価は下がり、給与はカットされた。このまま違和感を持ちながら働き続けるのは幸せなのか、悩みに悩んだ。

 会社帰りに自分のブランディングを考えるセミナーに参加した。様々な業界から、会社には頼らない自分の価値を見いだそうとする人が集まっていて興奮した。「会社軸」ではなく「自分軸」でキャリアを考えると覚悟を決め、昨年、会社の再就職支援制度に応募した。2年間基本給をもらいながら「次」を探す。応募したら後戻りはできない、片道切符だ。

 1年半の間、企業のために努力したが、結局は収入のめどが立たなかった。ヘッドハンターの誘いで外資系企業に再就職が決まったが、成果が出なければいつ切られるかわからない。

「セカンドキャリアに踏み出しても必ずしもハッピーではない。ただ、会社にいれば安心な時代ではもうない。会社が中国企業に買収され、突然中国勤務を命じられる可能性だってある。どっちもリスクがある中で、自分の価値を高め続けながら、自分で選択していくしかない」

AERA 2013年6月3日号