ここのところ目に見えて悪化している中朝関係。中朝関係筋によると、実は中国には「北朝鮮のトップのクビをすげ替える極秘計画書」があるという。内容は金王朝を打倒し「統一韓国」への道を開くものではなく、首領のクビをすげ替え、「去勢」された「新たな金王朝」のもと中国式の改革開放路線を進ませるためのものだそうだ。

 とはいっても、実はこれが作られたのは15年ほど前。しかも作成からしばらくして、奥にしまわれたそうだ。しかし中朝関係が芳しくない今なら、このありえない計画とも言いえないかもしれない。もし中国の手で新たに首領に担がれるなら、神輿は誰か。

「金日成の血を引き、核ミサイルを振り回さず、改革開放の道を歩む指導者なら中国は誰でもいいのではないか」

 と話すのは北の内情をよく知る朴斗鎮(パクトゥジン)・コリア国際研究所長。もし正哲(ジョンチョル)氏なら「正恩(ジョンウン)同志が不意の重病」との名目で政権禅譲もあり得る。正男(ジョンナム)氏は、母方の親族が何人も西側に亡命しているのが難点だ。

 冒頭の中朝関係筋は故金総書記の異母弟、金平一(キムピョンイル)・駐ポーランド大使(58)を挙げる。

 平一氏は金日成総合大学卒業後、軍でキャリアを積み、金日成氏を警護する護衛司令部大隊長に。父親そっくりの顔立ちで有力後継者とみられた時期もあった。だが1970年代前半に正日氏が後継者となるや海外に追放。79年のユーゴ大使館付き武官に始まりハンガリー、ブルガリア、フィンランド、ポーランドを大使として転々、文字通りの「流配生活」だ。

「だから、彼なら『本来なら金日成の後を継ぐべきなのに、金正日の弾圧で首領の地位を奪われた。いまこそ正統な指導者が政権を率いるべきだ』との大義名分を作ることができる」

 関係筋はさらに、

「張成澤(チャンソンテク)が腹を決めるかどうかが成否のカギだ」

 正恩氏の叔父で朝鮮労働党行政部長、張成澤氏。「正恩の後見人」と呼ばれるが、実は基盤は脆弱という。大幹部の大半は故・金日成氏の部下の子供、孫と血縁で固められている。だが張氏は「ごく平凡な家庭の出」、金日成氏の娘、金慶喜(キムギョンヒ)氏と結婚したのが唯一の基盤なのだ。「金王朝のゴッドマザー」慶喜氏は糖尿病などで余命何年もないと推測されている。

「正恩に自信がつけば、張成澤は3年以内に排除されるとみる。正恩は張が煙たい。肌合いが違う。張はソフトな口調でアドバイスするが、正恩はイライラするそうだ。金家は気の荒い家系だから。正恩が排除の気配を見せたら、かねて中国と太いパイプがある張はどうするか」

AERA 2013年5月27日号