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JAL再生の陰で 社員への辛辣な出迎え

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旅客販売統括本部企画グループアシスタントマネージャー岸部雄二(43)盛和塾の例会で、稲盛和夫名誉会長によく同行する。初めて声を掛けられた時は「緊張で言葉が出なかった」(撮影/伊ケ崎忍)

旅客販売統括本部企画グループ
アシスタントマネージャー
岸部雄二(43)

盛和塾の例会で、稲盛和夫名誉会長によく同行する。初めて声を掛けられた時は「緊張で言葉が出なかった」(撮影/伊ケ崎忍)

 破綻から一転、再生を果たしてみせたJAL。そこに至るまでの道のりでは、社員たちも大きな転機を迎えたという。

 旅客販売統括本部のアシスタントマネジャー、岸部雄二( 43 )にとって「破綻」は初めての経験ではない。JALに入社後間もない90年代半ば、代々実家で営んできた酒問屋が父の代で倒産。メーカーが小売りに直販する流通の変化の波にのまれた。自宅や事務所に差し押さえの札が張られ、競売にかけられた光景が今も目に焼き付いている。JALの破綻時、父にはこう言われた。

「経営陣は手足を縛られて何もできないから、お前ら社員がしっかりしろ」

 管財人の手ですべてが進み、なす術もなかった経験がそう言わせたのだろう。だが、返事は曖昧になった。当時の社内を見回し、その馬力や一体感があるとは思えなかった。

 だが、転機は訪れる。稲盛を信奉する中小企業の経営者でつくる組織「盛和塾」がJAL支援の会を立ち上げ、その窓口役になった。各地の例会に出向き、会場の設営や受け付けを手伝った。そこでは辛辣な出迎えが待っていた。

「つぶれた会社の人間がなにヘラヘラしてんだ」「これが中小企業だったら一家離散だよ」

 従業員とその家族の人生まで背負ってきた彼らから見れば、国に守られたJALは敵のような存在だ。それでもある時、60代の経営者が人生を語ってくれた。高校卒業後に母を亡くし、必死で働いてきたこと。資金繰りのつらさ、パートナーの裏切り、社員からついていくと言われた時の喜び。最後にこう言われた。

「他人にどう見られるかなんて気にしないで、歯を食いしばってやってみたらどうだい」

 頬を張られた気がした。忘れていた父の口癖が甦った。

「会社はみんなで動かすもんだ」「目先で人をだまくらかすなよ」

 社員の気持ちを束ねる行動規範として作成された「JALフィロソフィ」手帳の一節が目に飛び込んできた。

《人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力》

 JALには一流大学出身者が多い。だが、いくら潜在力があっても意欲が低く、考え方がバラバラでは結果は出ない──。吹っ切れた気がした。

AERA 2013年5月20日号


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